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ブラックでも借りざるを得ない奨学金、最低限知っておくべきリスク

奨学金にどう向き合うべきか? 給付型奨学金から企業・自治体の奨学金まで

・保証人というリスク 一家全員を巻き込む奨学金

 JASSOの奨学金は学生自身が契約者となるため、返済義務も借りた本人が負う。しかし奨学金を借りる際には連帯保証人と保証人の2人を用意することが求められる。中には契約内容をよく把握せずに保証人欄に名前を書いてしまったという親戚からの相談ケースもあるのだが、これには高いリスクがあることを知っておかなければならない。
 なぜなら、連帯保証人および保証人は、本人が何らかの理由で返せなくなった時に、本人に代わって返済する責任を負うからである。

 実は、POSSEの奨学金相談窓口に寄せられる相談の6割は、保証人からである。「息子が借りていた奨学金を返済できず、連帯保証人の自分(父)に請求が来た」という声や、70歳を過ぎて年金から孫の奨学金を返済せざるを得ない老人のケースもある。ひどいものでは、本人・連帯保証人・保証人が誰も返せず全員破産するというケースまである。奨学金は学生や若者の問題と考えられがちだが、実は保証人制度を通じて全世代に関わる問題なのである。

 そのため、奨学金を借りる際には、なるべく「機関保証」を利用する方が良いだろう。機関保証とは、借り入れに伴う連帯保証を保証機関が代わって行うというもので、毎月借り入れる奨学金から一定額を支払う必要がある。金額など条件によって保証料は異なるが、例えば、私立大学に自宅外から通う学生が月に64000円借りる場合、毎月そこから2666円が保証料として支払われる(2017年度)。

 決して安い金額ではないが、その後のリスクを考慮すると、親類の連帯保証よりも格段にリスクが低いため、ぜひ利用を検討してほしいと思う。

・国が歴史上初めて給付型奨学金を創設

 一方で、このような実情に対し、今年から、日本で初めての給付型奨学金が創設された。今年度は2502人が最大で月額4万円の返済不要奨学金を受け取っており、来年度からは約2万人まで増える予定である。給付型奨学金とは、つまり「返済義務」のない本当の奨学金である。誰しもこの制度を利用したいと思うのが当然だろう。

 しかし、この奨学金の対象になるのは、①生活保護受給家庭、②児童養護施設、③住民税非課税世帯のいずれかに当てはまる学生のみだ。人数も最大2万人と全大学生のわずか2.6%に過ぎず、一般家庭はそもそも対象外だ。金額も月4万円=年48万円では学費すら負担できないという批判もある。
 とは言え、対象になる家庭にとっては少しでも経済的負担は減ることになるので、この対象に入りそうな家庭では、ぜひ利用を検討してほしい。

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今野 晴貴

こんの はるき

NPO法人「POSSE」代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。年間2000件余りの労働相談に関わる。また、相談事例から日本の労働問題について調査、提言を行っている。著書に『ブラック奨学金』(文春新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)など。受賞歴に2013年度大佛次郎論壇賞、同年度流行語大賞トップ10など。仙台市出身、1983年生まれ。


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