能登の津々浦々を結んでいた、のと鉄道能登線(旧国鉄能登線)【前編】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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能登の津々浦々を結んでいた、のと鉄道能登線(旧国鉄能登線)【前編】

ぶらり大人の廃線旅 第21回

続く「波の駅」をたどればドボドボ地名

沖波駅の近くの集落には「ドボドボ」という珍しい地名が津波の避難場所になっていた。

 このあたりは海沿いの集落を屈曲しながら結ぶ県道34号に沿ってたどるコースで、沖波(おきなみ)駅の海側の集落に「ドボドボ」という看板が突如現われたのには驚いた。何という珍地名かと驚いたが、そこが津波の一時避難場所という。ドンドンとかトドロキといった水音の地名(漢字を当ててあるのが多い)は全国に分布しているが、ドボドボは初めて見る。富山出身の人の話ではドボドボは「水浸し」というニュアンスらしい。

急行停車駅だった鵜川駅前には「鵜川駅前」というバス停が今も健在。「鵜川駅前住宅」もある。

 藪の侵入がこれまでで最も激しい前波(まえなみ)駅のホームに立って周囲の田んぼを見渡し、次は鵜川(うかわ)駅。漁港のある鵜川の集落からは少し離れていて、昭和31年(1956)までは鳳至(ふげし)郡鵜川町という自治体だった(その後は能都町を経て現在能登町)。ここは甲駅の次の急行停車駅で、目の前に今も「鵜川駅前住宅」という3階建てアパートもある。

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今尾 恵介

いまお けいすけ

1959年横浜市生まれ。中学生の頃から国土地理院発行の地形図や時刻表を眺めるのが趣味だった。音楽出版社勤務を経て、1991年にフリーランサーとして独立。旅行ガイドブック等へのイラストマップ作成、地図・旅行関係の雑誌への連載をスタート。以後、地図・鉄道関係の単行本の執筆を精力的に手がける。 膨大な地図資料をもとに、地域の来し方や行く末を読み解き、環境、政治、地方都市のあり方までを考える。(一財)日本地図センター客員研究員、(一財)地図情報センター評議員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査、日野市町名地番整理審議会委員。主著に『日本鉄道旅行地図帳』『日本鉄道旅行歴史地図帳』(いずれも監修/新潮社)『新・鉄道廃線跡を歩く1~5』(編著/JTB)『地形図でたどる鉄道史(東日本編・西日本編)』(JTB)『地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み1~3』『地図で読む昭和の日本』『地図で読む戦争の時代』 『地図で読む世界と日本』(すべて白水社)『地図入門』(講談社選書メチエ)『日本の地名遺産』(講談社+α新書)『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)『日本地図のたのしみ』『地図の遊び方』(すべてちくま文庫)『路面電車』(ちくま新書)『地図マニア 空想の旅』(集英社)など多数。


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