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カズオ・イシグロ「名翻訳家」が選ぶ、イチオシの作品とは?

『充たされざる者』は押さえておくべき1冊だ。 土屋政雄氏インタビュー③

イシグロはノーベル賞をとりたくなかった!?

 賞ということでは、今回カズオ・イシグロはついに最高の栄誉と言えるノーベル文学賞を受賞した。土屋さんはどう感じているのか。

「今回の受賞、随分イシグロは喜んでいたそうです。しかし実はイシグロはこれまでノーベル賞にはあまり関心がないような発言をしていました。なぜか。今までのノーベル文学賞受賞者の作品リストを見た時に、各作家の代表作がどれも若い頃に書かれていたことに衝撃を受けたそうなんです。つまり受賞後、目立つ作品を書いた作家がいない。ノーベル賞を取ることで、もう代表作は『残した』という評価をされてしまうのではないかと。私としてはイシグロには例外になってもらって、これから代表作を書いてもらえればありがたいです」

 最後にとっておきの情報を教えてくれた。

「今なにか(新作を)書いているらしいということは聞いています。一昨年に彼が来日した時に言葉を交わしました。『また10年も待たされたら本当に私はいませんよ』と私が言ったら、イシグロは『いやあ3、4年で…』と苦笑いしていました。まあ、どうなるかわかりません(笑)」

『充たされざる者』1995年、『わたしたちが孤児だったころ』2000年、『わたしを離さないで』2005年、そして『忘れられた巨人』が2015年。過去作品の発売年だ。次はその5年先か10年先か。ノーベル賞作家カズオ・イシグロ、名翻訳家土屋政雄、黄金コンビによる傑作を楽しみに待ちたい。

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土屋 政雄

つちや まさお

翻訳家。主な訳書に『日はまた昇る 新訳版』(アーネスト・ヘミングウェイ)、『ダロウェイ夫人』(ヴァージニア・ウルフ)、『ねじの回転』(ジェイムズ)、『コンゴ・ジャーニー』(レドモンド・オハンロン)、『エデンの東』(ジョン・スタインベック)など。ほか『日の名残り』にはじまり、『わたしを離さないで』、『忘れられた巨人』などカズオ・イシグロ作品を数多く翻訳。


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