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12~13。カズオ・イシグロを“数字”で読む。「名翻訳家」が出した数字の意味とは?

フォグカウントと、グレードレベルから分析 土屋政雄氏インタビュー②

12~13。カズオ・イシグロの文章を読み解く。この数字の意味とは?

 12~13。続いて土屋さんはまたしても“数字”を口にした。カズオ・イシグロ作品の文章を分析すると出て来るという。これは一体何の数字なのだろうか。

「“フォグカウント”という文章の難しさを測る尺度があります。これはテクニカルライティングで使うものです。フォグカウント(FG)がわかれば、グレードレベル(GL – 英語圏での教育を何年間受けていれば理解できる文章か)がわかります。

 求め方を説明します。単語ごとに点数をつけます。1音節と2音節の単語なら1点、3音節以上の単語なら3点です。文章全体でそれを合計したものがFGです。それをセンテンスの数で割って平均FGを求め、さらに2で割るとGLが得られます。イシグロの場合はGLが12とか13という値になります。つまり、『12、3年、英語圏での教育を受けていれば理解できる文』。高校生ぐらいなら誰でも理解できるということですね。まあこれはテクニカルライティングの基準なので、完全に文学作品に当てはめられるわけではないと思いますが」

 とにかくクセがなかったと言う、カズオ・イシグロの文章。しかし最新作には小さな変化を感じたという。

「ひとつのセンテンスの中に、動詞が2つ入るような特別な書き方をしています。イシグロに言わせると関係代名詞を省いていったらそうなったそうなんですが。たとえば“was”と“came”が一文に入るような書き方ですね。『忘れられた巨人』では意識してやられているそうです」

 次回、最終回では、カズオ・イシグロ作品の魅力を聞く。

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土屋 政雄

つちや まさお

翻訳家。主な訳書に『日はまた昇る 新訳版』(アーネスト・ヘミングウェイ)、『ダロウェイ夫人』(ヴァージニア・ウルフ)、『ねじの回転』(ジェイムズ)、『コンゴ・ジャーニー』(レドモンド・オハンロン)、『エデンの東』(ジョン・スタインベック)など。ほか『日の名残り』にはじまり、『わたしを離さないで』、『忘れられた巨人』などカズオ・イシグロ作品を数多く翻訳。


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