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埼玉「大宮」の由来は? 近代的な旧中山道を少し歩くと…

埼玉地名の由来を歩く⑨

全国5位730万人もの人口を抱える埼玉県の歴史を地名で紐解く。地名の由来シリーズ最新刊『埼玉地名の由来』から、著者・谷川彰英が大宮の地名の由来を歩く。

氷川神社に向かう

「さいたま新都心駅」は平成12年(2000)4月1日に開業を迎えた新しい駅だ。さいたまスーパーアリーナでのイベント開催時には大変な混雑になる。駅の東側はもとは片倉工業大宮製作所の跡地で、そこを利用して「新都心」なる駅を作ったことになる。東京の「新宿」でさえ「副都心」としてできた経緯を考えると、「新都心」という言葉の中には「さいたま」市民の強い意志が感じられる。

 その駅を東口に降りたところに走っている道路が旧中山道だというが、あまりにも近代的過ぎてピンとこない。

▲「武蔵野國一宮」の石標

 ところが、ほんの数分も行くと、写真のように「武蔵國一宮」という大きな石標が目に入ってくる。よく見ると小さく「氷川大明神」という文字も見える。ここが「大宮」という地名の由来となった氷川神社への入り口である。この石標の後ろに一の鳥居があり、それをくぐって神社へ向かうことになる。ここから約2㎞にわたって一直線に参道が続いている。

 ▲氷川宮大門先(『江戸名所図会』より)

『江戸名所図会』に描かれた「氷川宮大門先(ひかわのみやだいもんさき)」の図である。手前が中山道で、角に石標が見え、一の鳥居をくぐってずっと参道が続いている。

 参道に入るとまったく別世界のような感にとらえられる。今は市指定の天然記念物のケヤキの並木が続くが、戦前までは杉の並木だったということで、「並木十八丁杉鉾(すぎほこ)つづき」と呼ばれていたという。杉が武具の鉾のように十八丁も続いていたという意味である。

 全国各地の神社を見て回っているが、これほど立派な参道は見たことがない。それだけこの氷川神社がこの地で大切に信仰されてきているという証であろう。

 1㎞余り歩いてようやく二の鳥居に出るが、ここが大宮駅から参道へ合
流する地点である。

 この地一帯は「高鼻町(たかはなちょう)」と呼ばれているところで、その由来は「塙(はなわ)」だと考えられている。「塙」とは高い台地のことで、この一帯、見沼が深く入り込んだ高い台地にあったことによる。

『埼玉地名の由来を歩く』(著・谷川彰英)り構成〉

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谷川 彰英

たにかわ あきひで

筑波大名誉教授

1945年長野県生まれ。ノンフィクション作家。東京教育大学(現・筑波大学)、同大学院博士課程修了。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学教授、理事・副学長を歴任するも、退職と同時にノンフィクション作家に転身し、第二の人生を歩む。筑波大学名誉教授。日本地名研究所元所長。主な作品に、『京都 地名の由来を歩く』シリーズ(ベスト新書)(他に、江戸・東京、奈良、名古屋、信州編)、 『大阪「駅名」の謎』シリーズ(祥伝社黄金文庫)(他に、京都奈良、東京編)『戦国武将はなぜ その「地名」をつけたのか?』 (朝日新書)などがある。

 

 

 

 

 

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  • 2017.08.09