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第二次大戦、ドイツ軍の通商破壊戦に苦しむイギリスが頼った「海の向こうの兄弟」

オムニバス・Uボート物語 深海の灰色狼、敵艦船を撃滅せよ! 第10回

深海の灰色狼。第二次世界大戦で大西洋において連合国側を戦慄させたドイツ海軍の潜水艦「Uボート」にまつわる物語をオムニバス連載で紹介する。 

「プレハブ機動部隊」のひとつ、殊勲の22.3対潜機動部隊の旗艦を務めたカサブランカ級護衛空母の6番艦ガダルカナル。

U505の数奇な運命:「プレハブ機動部隊」とは?

 1943年11月18日、自殺したペーター・ツェッヘ艦長の後任として、ハラルド・ランゲ大尉が着任した。Uボート艦長としては比較的珍しいインド洋での行動経験を有する優秀な彼の赴任は、Uボート艦隊司令長官カール・デーニッツ提督(元帥)自らが決めたものだった。災い続きで「呪われた」同艦に優れた艦長を配することで、「厄払い」をしたかったのである。その思いは結局かなわないのだが。

 かくして1944年3月16日、U505はランゲの指揮による2回目であり、同艦としては12回目の哨戒航海に出撃した・・・。

 ところで、第二次大戦が勃発すると、イギリスはUボートによる通商破壊戦に対抗すべく、対潜護衛艦艇を一気に、しかも大量に必要とした。だが、同大戦の緒戦で負けがこんだ同国の国力はすでにいっぱいいっぱいとなっており、わずかな余裕もなかった。そこでイギリスは、「大西洋の向こう側の兄弟」であるアメリカにそれらの生産を要請。優先度が高かったのが、標準型商船の改造により短期間で数が揃えられる小型の護衛空母と、大型の艦隊駆逐艦よりもやはり短期間で数が揃えられる護衛駆逐艦であった。

 

 これを受けたアメリカは、自国での使用も鑑みて、短期量産が可能なプレファブリケーション(プレハブ)工法により護衛空母と護衛駆逐艦を大量建造。イギリスに供与するのみならず、自国でも多数を運用した。

 特に護衛空母は対潜任務だけでなく航空機運搬などにも活躍。その万能ぶりからジープ・キャリアーの渾名で呼ばれることもある。わが国では、ジープといえば汎用小型4輪駆動車の名称として知られており、一部で同車の万能ぶりにちなんで護衛空母にこのような渾名が与えられた言われることもある。だが実は、戦前からのアメリカの人気漫画「ポパイ(Popeye the Sailorman)」に登場する、どこにでも行けて何でもできる架空の動物の名がJeepであり、陸軍の小型車はこれにちなんで命名された。そして護衛空母の場合も、小型車のほうではなく元祖ジープにあやかっての命名である。

 この護衛空母を旗艦とし、隷下に4~5隻の護衛駆逐艦を配置した対潜機動部隊は「ミニチュア空母機動群」とか「プレハブ機動部隊」の渾名で呼ばれ、主に対潜任務で大活躍することになるが、アメリカ海軍の22.3対潜機動部隊も、そんな「プレハブ機動部隊」のひとつであった。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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