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世界一の投資家・バフェットに学ぶ。その究極にシンプルな投資哲学

「良き習慣」と「原理原則」に忠実に。ウォーレン・バフェットに学ぶお金の本質③

「能力の輪」の外にあるものには手を出さない

 もちろん株式投資でも同様です。バフェットの特徴は株式投資の中でも自分が本当によく理解できる分野と企業(バフェットはこれを「能力の輪」と呼んでいます)に集中する点にあります。株式投資の世界にも当然、流行りすたりがあります。

 たとえば、IT企業が成長していて人気だとなると、その業界のことも企業のこともよく知らない人たちが「今、成長しているから」「みんながやっているから」という理由からIT企業の株を買おうとしますが、バフェットは「能力の輪」の外にあるからという理由でIT企業に投資することは長年避けてきました。

 投資の世界には基本原則を揺るがすような誘惑や、能力の輪から出たくなるほどの誘いがたくさんあります。そんな時、「みんながやっているから」という理由で安易に能力の輪の外に出るか、それとも原則や能力の輪をとことん守ることができるかどうかで株式投資の成果は決まるというのがバフェットの考え方なのです。

 こうした姿勢を貫くことで、バフェットは時に「時代遅れ」と揶揄されることもありましたが、最後にはバブルの崩壊などによってバフェットの正しさが再認識されています。バフェットにとって重要なのは、他人がどう考え、行動し、評価するかではありません。自分の決めたルールに従って生きることこそが重要なのです。こう話しています。

「最も重要なのは、自分の能力の輪をどれだけ大きくするかではなく、その輪の境界をどこまで厳密に決められるかです」

「時代遅れになるような原則は、原則じゃありません」

 株式投資において大切なのは、誰かの意見や流行に従って「何に投資するか」を決めるのではなく、自分が本当に理解できるものに投資をするということなのです。

 世の中にはお金に関するさまざまな理論や手段手法があふれています。ネット上にはたくさんの節約術や投資術があふれ、魅力的な商品も山のように存在します。思わず手を出したくなりますが、バフェットが「時代遅れになるような原則は、原則じゃありません」と言っているように節約や投資に関する原則は案外とシンプルでそこに流行りすたりはありません。

 大切なのは次々と流行に飛びついて中途半端になることではなく、自らが決めたルールや原理原則をどこまで守れるかなのです。バフェットは若い頃、『1000ドル儲ける1000の方法』という本に出会い、感銘を受けていますが、その本から学んだのは手法ではなく「自分から始めなければならない」「ルールは守らなければならない」というものでした。

 本を読んだり、講演などを聞いた時、その内容に対して「あっ、それは知っている」と言う人は少なくありませんが、では「できているか?」という問いに「はい」と言える人は案外少ないのではないでしょうか。そこにバフェットとの違いがあります。

 バフェットにとって原則やルールは「実行する」ものであり、「知っている」だけでは何の意味も持ちません。成功のためには「知る」だけではなく、「実行する」、それもバフェットのように「習慣となるまで徹底して忠実に実行する」ことが必要なのです。

【次回:世界一の投資家・バフェットが1セント硬貨を拾い上げて言った言葉

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桑原 晃弥

くわばら てるや

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ生産方式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)などの制作を主導した。著書に『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP文庫)、『ウォーレン・バフェット成功の名語録』(PHPビジネス新書)、『伝説の7大投資家』(角川新書)、『トヨタのPDCA+F』(大和出版)など。バフェット関連書籍多数。


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