秀吉はイノベータ―?

 秀吉です。信長の「殺す」は決心、家康の「待とう」は根性です。才能は関係ありません。秀吉の「鳴かせてみよう」だけは、工夫が要ります。才能、イノベーションが要るのです。

三英傑 豊臣秀吉

 もちろん、信長だって工夫していますし、根性もあります。家康だって同じ。秀吉だって、信長以上に残虐なときもあれば、家康と忍耐合戦で勝ったこともあります。厳密に三人の人生を表した歌ではありません。それを踏まえても、よくできた歌だなと思います。

 秀吉は本当に天才で、次から次へと予想もつかないことをやりました。なにぜ、「日本で一番出世した人物」ですから。秀吉がやったことを現代におきかえると、貧乏人のフリーターが三十年で大財閥の社長になってしまうような夢のまた夢の話なのです。その人はそれで上手くいったかもしれないけれども、普遍性はゼロで、誰にも再現できません。

 秀吉の天才ぶりを物語る話を一つあげましょう。有名な刀狩と同時にやった、海賊停止(ちょうじ)令です。現在の国際法でこそ「海賊は人類の敵」という扱いになっていますが、近代以前は「海軍と商船と海賊は同じもの」です。貿易船など、「取引が成立しなければ、その場で海賊に早変わり」というのが世界的な傾向です。それを秀吉は、「海賊は存在そのものを認めない」との立場を打ち出し、本当に実現したのです。これにヨーロッパが追いついたのは、一八五六年パリ条約。クリミア戦争の講和条約ですが、この戦争の最中にペリーが日本にやってきています。秀吉の先進性は、世界標準から三百年早いのです。

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