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「ノリタケの森」「ノリタケチャイナ」…一度聞いたら忘れられない陶磁器で有名な街

名古屋地名の由来を歩く【面白地名①】

ノリタケチャイナ100年の歴史

伝統的な則武の陶磁器〈(株)ノリタケカンパニーリミテド提供〉

 ノリタケチャイナは洋食の食器としてすでに100年も前から内外でもてはやされたブランドである。ノリタケの歴史は安政6年(1858)にまでさかのぼる。江戸は京橋生まれの森村市左衛門という商人がいた。市左衛門は海外貿易を志した後、弟と森村組を創設し、西洋人向けのグッズを販売していた。

 貿易の幅も広がっていったが、やがてアメリカ人向けの陶磁器が輸出品として増えていった。こうして明治25年(1892)瀬戸で生地を仕入れる必要が生まれ、名古屋に支店を開設した。これが名古屋におけるノリタケチャイナを生むことになる。

 この「ノリタケ」というのは、もちろんこの名古屋の地にある「則武」という地名に由来する。この地名の謎をさらに追っていくと、 「則武」 という人物名に由来するといわれている。 『中村区の地名のおこり』には、 「府城西南十五町より二里に至る、庄内総て二十村あり、 是は中世則武といふ、人の名 みょうでん 田なるが終に広く荘号となれるなり」と記されており、さらに、この則武という人物は元暦(1184)以前の人で、美濃国にある則武村もこの人物に関係があると説いている。

 現在の名古屋駅の周辺が則武村であり、ここにチャイナの工場がつくられたため、 「ノリタケチャイナ」という名前が誕生したということである。

 ノリタケチャイナは単なる産業というだけでなく、まさにアートの世界を紡ぎだしてきた世界の企業である。

〈周辺ガイド〉

太閤通:名古屋駅の西側に広がる大通り。太閤や太閤通・千成通・豊国通あるいは橋名の豊公橋(いずれも中村区)などが、秀吉から来ていることはいうまでもない。このように歴史上の人物名が地名を生むケースは珍しくない。

『名古屋地名の由来を歩く』(著・谷川彰英)より構成〉

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谷川 彰英

たにかわ あきひで

筑波大名誉教授

1945年長野県生まれ。ノンフィクション作家。東京教育大学(現・筑波大学)、同大学院博士課程修了。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学教授、理事・副学長を歴任するも、退職と同時にノンフィクション作家に転身し、第二の人生を歩む。筑波大学名誉教授。日本地名研究所元所長。主な作品に、『京都 地名の由来を歩く』シリーズ(ベスト新書)(他に、江戸・東京、奈良、名古屋、信州編)、 『大阪「駅名」の謎』シリーズ(祥伝社黄金文庫)(他に、京都奈良、東京編)『戦国武将はなぜ その「地名」をつけたのか?』 (朝日新書)などがある。

 

 

 

 

 

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  • 谷川 彰英
  • 2011.10.08