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教員は聖職者だから、残業代は少なくていいのか?

知ったかぶりでは許されない「学校のリアル」 第6回

◆見直すべき数字「4%」とは何か

 今年7月に開かれたシンポジウムで、馳浩・元文科相が「4%の見直しも必要で、これについては年内に結論を得ることが自民党と政府の間で合意できている」と述べた。この4%とは、何なのか。

 1971年に制定された「公立の義務教育諸学校の教員職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)において、教職員の残業代を認めない代わりに基本給の一定割合を「教職調整額」として一律に支給することが決められた。その一定割合が、4%なのだ。

 残業してもしなくても4%がもらえるというので、当時は教員の多くが喜んだという。その4%は、そのころの教員の平均残業時間である月間8時間から割り出された数字である。しかし現在は、連合総研の調査によると、教員の残業時間は過労死ラインといわれる月100時間を上まわるケースが小学校で全体の55.1%、中学校では79.8%にも達している。

 4%は、とっくに妥当な数字ではなくなっているわけだ。その見直しをやるという馳・元文科相の発言は、当然と言えば当然である。しかし現実の残業時間に見合った額を支給しようとすれば、かなりの予算が必要になり、財務省が首を縦に振らないのも目に見えている。

 ともかく、残業時間は8時間から100時間以上へと飛躍的に伸びている。なぜ教員は、そんなに働くのだろうか。あるベテラン教員に訊ねたら、次のような答が返ってきた。

「聖職意識が強いというのが最大の原因ですよ」

 
次のページ教員自身が「教員聖職論」にとらわれていた

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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