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酒樽が住処、砂の上を転げ回る…古代ギリシャに“ホームレス哲学者”現る!?

天才の日常~ディオゲネス<第1回>

ホームレスから哲学者へ

 ディオゲネスがこのような生き方をするようになったのは、生まれ故郷を追放されたことが理由となっている。

 彼は紀元前412年頃、現在のトルコ北部黒海沿岸のシノペという都市に生まれた。父は両替商で、ディオゲネス自身も当初は貨幣を扱う仕事をしていたようだ。 ところがある時、「国の中で広く流通しているものを変えよ」という神託を受けたディオゲネスは、貨幣を粗悪なものに改鋳してしまった。それにより国外追放の罰を受け、アテネへと流れ着き、ホームレスのような生活を始めたのである。

 アテネに着いたディオゲネスは、ソクラテスの親友で「キュニコス派」の創始者となった哲学者アンティステネスを訪ね、弟子入りを懇願した。しかし、アンティステネスは弟子をとっていなかったため断った。ところが、ディオゲネスは粘り強く弟子入りを頼み続ける。あまりにしつこいために、アンティステネスが杖を振り上げて叩こうとすると、ディオゲネスは頭を差し出し「どうぞ打ってください。わたしを追い出せるほど堅い木などないでしょうから」と言った。アンティステネスはついに根負けして弟子入りを認めることとなった。

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大賀 祐樹

おおが ゆうき

1980年生まれ。博士(学術)。専門は思想史。

著書に『リチャード・ローティ 1931-2007 リベラル・アイロニストの思想』(藤原書店)、『希望の思想 プラグマティズム入門』 (筑摩選書) がある。


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