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甲子園43季連続取材中の記者が東筑「石田伝説」で思い出したこと

東筑「石田伝説」と球児たちとの邂逅

夏の甲子園が開幕。大会1日目、福岡から久々出場の公立校として注目を浴びた東筑が登場。福岡大会を一人で投げぬいたエース・石田旭昇は済美の強打に屈したが、思い出されるのは東筑に受け継がれる「石田伝説」だ。『スコアブックは知っている』などの著書があり、43季連続で甲子園を取材する楊順行氏が、夏の思い出と、球児たちとの希有な邂逅をひもとく。

東筑に受け継がれる「エース・石田」の系譜

 

「雨で滑ったのか、変化球が浮いてしまいました。ストライクが取れないので、力勝負だとはじき返されることがわかっていても、まっすぐで勝負するしかなかった……」

 大会第1日、雨の中断1時間16分を含む済美(愛媛)と東筑(福岡)の一戦。福岡大会7試合を一人で投げ抜いた東筑のエース・石田旭昇は、8回途中まで2ホーマー含む10失点に唇をかんだ。

 こんなはずでは……というのは、青野浩彦監督も同じである。 「思ったところに変化球が投げられない。いろいろ工夫しながら投げてみろ、といいましたが、ボールが滑ることにちょっと神経質になったのか……最後まで、落ちるはずのボールが落ちてくれませんでしたね」 。結局、8回二死から石田がこの夏初めてマウンドを譲った東筑は、10対4で敗れることになる。東筑にとっては21年ぶり、福岡にとっても公立高校の出場はそのときの東筑以来のことだった。

 そして話題になったのがもうひとつ。過去5回、夏の甲子園に出場している東筑だが、そのうち3回、エースが石田姓だった。その石田伝説が、今回も受け継がれているのである。 1996年に出場したときは、盛岡大付(岩手)に勝って初戦を突破した。そのときのエースは、石田泰隆さんという。

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楊 順行

よう のぶゆき

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は52回目を数え、観戦は2000試合を越えた。。春夏通じて43季連続“出場”中。著書に『スコアブックは知っている』(KKベストセラーズ)『甲子園の魔物』(ベースボールマガジン社)などがある。


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