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芥川賞はアイドル文学賞!? 芸能人的な人気があった芥川龍之介

芸能人と文学賞⑤

芥川龍之介の美貌に誰もがひかれていた

 芥川研究で知られる竹内眞さんなども、どうやら風貌に惚れ込んだ一人のようです。『現代小説全集第一巻 芥川龍之介集』(25年4月・新潮社)の巻頭に掲げられた写真を「先生の写真の代表的(ルビ:ティピカル)なものの一つ」としたうえで、新時代に対する先生の意欲と、過去世に対する深い反省そんなものが、この写真から受けとられるような気がする。(引用者中略)何はともあれこの写真が先生の風貌をもっとも鮮やかに表現しているのに違いあるまい。それは天才的な風貌とでも云っていい。(『芥川龍之介全集月報』8号[35年6月] 竹内眞「写真の事なぞ」)

 見た目のカッコよさにメロメロっています。

 あるいは、26年生まれの奥野健男さんは子供時代、女子大生だった親戚のお姉ちゃんが、芥川さんの写真を飾っていたのを目撃したのだとか。

 太宰治に限らず芥川の名を冠したということで(引用者注:芥川賞に)特別の魅力と価値を感じた作家が多かったろう。それほど芥川龍之介は、その風貌、作風、知性、そして劇的な最期によって特別の文学者であったのだ。いわば純文学の殉教者的存在であった。ぼくは子供の頃、女子大に通っていた文学少女の従妹の文机の上に、芥川龍之介のブロマイドが飾ってあったのをおぼえている。女子学生の憧れの的になり、ブロマイドが売られた文学者は、おそらく芥川龍之介がはじめてであろう。(『文學界』八九年三月号 奥野健男「芥川賞の意義と変遷」)

次のページ後追い自殺も相次いだ

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川口 則弘

かわぐち のりひろ

直木賞研究家

川口則弘(かわぐち・のりひろ)



1972年、東京都生まれ。直木賞研究家。筑波大学比較文化学類卒業。



昼間は会社員として働きながら、趣味である「直木賞」研究にコツコツと没頭。



深夜、休日に寝食を忘れて膨大な資料収集と整理にあたり、



ついに2000年、直木賞非公式WEBサイト「直木賞のすべて」を運営。



さらに趣味が高じて「文学ではなく、大好きな文学賞」の研究範囲が拡大。



「芥川賞のすべて・のようなもの」、「文学賞の世界」のサイトまで運営。



口コミで「なんかスゲー直木賞のオタクがいる!」とサイトが評判になり、



いつしか、“街場の”直木賞研究家として執筆デビュー。



単著に『直木賞物語』、『芥川賞物語』(ともに文春文庫)、



『ワタクシ、直木賞のオタクです。』(バジリコ)、編著書に『消えた受賞作 直木賞編』、



『消えた直木賞 男たちの足音編』(いずれもメディアファクトリー)がある。



「直木賞のすべて」http://prizesworld.com/naoki/



「芥川賞のすべて・のようなもの」http://prizesworld.com/akutagawa/



「文学賞の世界」http://prizesworld.com/prizes/


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