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平成元年、みな次々と大きな車へと乗り換えた

キーワードで振り返る平成30年史 第3回

3ナンバー規制撤廃

~平成元年(1989)~

 

 先日ある車とすれ違った。ハチロクこと「AE86スプリンター・トレノ」。生産中止から30年を経過している昭和末期の車。実はこの車、中古車市場ではかなりの高値がついている。その理由はアーケードゲームにもなりアニメや映画化もされた長寿マンガ『頭文字D』。連載期間は平成7年から25年というからまさに平成を代表する作品。劇中で主人公が駆り派手なドリフトを魅せる車が他ならぬAE86だった。

 ところで実車を見て驚いたのはその大きさ。今の基準で見るとかなり小さい。背が低く室内居住性の優先度が低いデザインだけに、下手をすると軽のトールワゴンより小さく見える。そう、平成は車がどんどん大きくなった時代でもあった。きっかけとなったのは元年の税制改革。それまで車は様々な基準で5ナンバーの小型乗用車と3ナンバーの普通乗用車に分類されていた。と言っても今の感覚だと小型が普通で普通が大型といったところ。税金が5ナンバーの倍以上かかる3ナンバー車は社用車など限られたシーンでしか見られなかった。   

 それが排気量のみでの分類となり、庶民も低い税負担で3ナンバーの大きな車に乗れるようになった。時折しもバブル真っ盛り。昭和末期に発売された3ナンバー専用車日産「シーマ」がブームとなるほどの人気を博していた。そんな憧れの3ナンバーに庶民も手が届くようになったのだ。まさにこのタイミングで登場した3ナンバーサイズの三菱「ディアマンテ」が大ヒット。
 これに続いてそれまで5ナンバーサイズに収められていた車も続々と3ナンバーサイズに。今や珍しくもなんともなくなった3ナンバー。改正前の車であるハチロクが小さく見えてしまうのも納得なのだった。

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後藤 武士

ごとう たけし

平成研究家、エッセイスト。1967年岐阜県生まれ。135万部突破のロングセラー『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社文庫)ほか、教養・教育に関する著書多数。


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