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第41回 東武東上線の快速急行で旅気分

森林公園駅から池袋まで、TJライナーのクロスシートで。

東上線の快速急行~森林公園駅にて

 純然たる通勤通学路線というのは旅気分が味わいにくい。

 とりわけ、首都圏の路線では、通勤型ロングシートばかりで、日中でも混雑していれば尚更である。

 東武東上線もそうした路線のひとつだ。

 座席指定特急もないので、面白くも何ともないロングシート通勤電車ばかり。

 ちょっと用があっても旅気分は味わえない。

 そんな東上線にもラクラク通勤をウリとしたTJライナーというクロスシートの電車が数年前から走っている。

 しかし、池袋発の夕方の下り電車だけだ。

 沿線に住んでいるのなら重宝するけれど、遠くからの訪問者には縁がない。

 第一夕方に池袋を発っても、泊まりでない限り、戻ってこなくてはならないのだ。

 そう思って色々調べていたら、このTJライナーとして池袋を出発する電車は、突然池袋に出現するわけはなく、郊外にある森林公園駅の車両基地からはるばる池袋へやってくることが判明した。

 しかも回送電車としてではなく、快速急行として客を乗せて池袋に到着するのだ。

 というわけで、本当にクロスシートに乗って旅気分が味わえるかどうかを確かめるために、わざわざ所用を兼ねて、夕方、森林公園駅にたどり着き、16時57分発の快速急行に乗ってみた。

快速急行の車内

快速急行池袋行きの行き先標示板

 予想通り、車内はクロスシート。

 車両基地から到着したばかりだったので、車内はガラガラ。

 二人掛けのクロスシートがずらりと並んでいた。

 もっとも、ドアが4つの通勤型車両の手狭なスペースだから、席によっては、ドアと窓の間の壁が邪魔して、車窓が楽しめない席もある。
 ガラガラだったから、そんなハズレ席は避けて、お気に入りの席に座ることができた。

緑豊かな郊外の車窓から

 小川町からの電車が到着し、多少賑やかになると、電車は発車、しばらくすると森の中を駆け抜け、川を渡り、それなりの郊外の車窓を楽しむことができた。

 坂戸でほぼ満員となり、川越あたりでは、座れない人もかなりいた。

 窓側に座っていれば、そんな状況とは別世界。

 だんだんと線路際は住宅が立て込んできて、広々とした風景とは縁遠くなっていったが、クロスシートから眺めると、ちょっぴりゆったりした気分になるから不思議だ。

 鞄からペットボトルを取り出して口にしても、それほど違和感はない。
初夏だったので、50分程の乗車で外を眺めていても暗くならなかった。

 そして、明るいうちに池袋に到着。

 なかなか楽しい「旅」となった。

池袋で座席の位置を自動転換

折返しTJライナーとなる

 池袋に到着後、電車は一旦ドアを閉めると、自動で座席の向きを変えていた。

 反対側のホームは、300円の着席整理券を持った人が列を作っていた。
同じ車両でも快速急行は運賃のみで乗れる。

 ちょっぴり優越感を味わいながら、都会の雑踏の中へ繰り出していった。

野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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