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真田昌幸のニヤリ顔

真田昌幸の有名な肖像画は、本人が描いたものだといわれている。

来年の大河「真田丸」追加キャストが発表されました。
内野聖陽が徳川家康を演じるほか、木村佳乃が幸村の姉役。
役名の〝松〟というのは、小山田茂誠の妻となって
「村松殿」と呼ばれたことからつけた名なのでしょう。
そして、なんといっても幸村の父・昌幸を演じるのが
草刈正雄というのが、30年前NHK時代劇「真田太平記」の
草刈幸村に熱中したオールドファンにはうれしい限り。
NHKさん、狙ったんでしょうね(笑)。

さて、今から404年前の慶長16年6月4日
(現在の暦で1611年7月13日は、その昌幸が亡くなった日。
関ヶ原の戦いで石田三成に与して流罪となり、
紀州高野山領の九度山に閉居してから11年年近く。
数え65歳の生涯だった。
『真田家譜』に「病を以て死す」、
『真武内伝追加』に「病死」とあるが、本人も書状に
「去年の病気の如く、当年も相煩い候」
「食事の味も、しかじか覚え候わず」
などと書いていたから、老齢に及んで病がちとなった末に
体力が尽きたのだろう。
 『先公実録』には「火葬」とあり、
高野山のお膝元で仏教式に弔われたようだ。
稀代の策士として武田・北条・上杉・徳川・豊臣の中を
生き抜いた男の死だった。

ところでこの昌幸、よく知られる総髪姿の肖像画があるが、
『真武内伝追加』にはこの画は絵も賛も
昌幸自身によるものということだ、と紹介されている。
三角眼で前をにらみ、大きい口は横に大きく伸びて
ニヤリと笑っているように見える絵の丈夫に添えられた賛は、
「はかりごとを帷幕の内にめぐらし、勝事を千里の外に決す」
というもの。陣中で謀略を思案し、
遠く離れた場所での勝利を決するのだ、
といういかにも昌幸らしい賛だ。
もし本人もよるものだとすれば、
ニヤリ顔は謀才を自負する昌幸の、
まさに「してやったり」顔なのかも知れない。

※九度山真田庵に残る昌幸の墓

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橋場 日月

はしば あきら

はしば・あきら/大阪府出身。古文書などの史料を駆使した独自のアプローチで、新たな史観を浮き彫りにする研究家兼作家。主な著作に『新説桶狭間合戦』(学研)、『地形で読み解く「真田三代」最強の秘密』(朝日新書)、『大判ビジュアル図解 大迫力!写真と絵でわかる日本史』(西東社)など。


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