西那須野から大田原へ・東野鉄道【前編】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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西那須野から大田原へ・東野鉄道【前編】

ぶらり大人の廃線旅 第19回

ホームか、線路か、

 いつの間にか大田原市に入り、再建されたと思われる「駅の跡」が見えてきた。プラットホームへ上がる斜面にイミテーションの「線路状のオブジェ」が貼り付けられているが、ホームの上へ登る線路などあったはずもなく、おそらくイメージだけで作ったものだろう。史跡として整備するなら、線路やホームの位置づけは節度をもって処遇してもらいたい。ホームが模造か本物かの区別も明記すべきだろう。軽い気持ちで作ったオブジェも、半世紀も経てば本物と区別できない人も出てくる。

大田原高校の最寄り駅だった大高前駅跡のモニュメント。プラットホームに登るかのようなレールのオブジェには違和感も。

 ここが大高前(だいこうまえ)駅のはずだが、肝心の駅名標は見当たらない。大高は栃木県立大田原高校の略称で、今年の3月27日に起きた雪崩で、訓練中だった山岳部員の生徒7人と引率の教員1人が犠牲になったのはまだ記憶に新しい。痛ましい事故であった。同校は明治35年(1902)創立の伝統ある旧制中学校が前身で、副首相をつとめたミッチーこと渡辺美智雄氏、息子の喜美氏(元みんなの党党首)も共にここの卒業生である。
 

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今尾 恵介

いまお けいすけ

1959年横浜市生まれ。中学生の頃から国土地理院発行の地形図や時刻表を眺めるのが趣味だった。音楽出版社勤務を経て、1991年にフリーランサーとして独立。旅行ガイドブック等へのイラストマップ作成、地図・旅行関係の雑誌への連載をスタート。以後、地図・鉄道関係の単行本の執筆を精力的に手がける。 膨大な地図資料をもとに、地域の来し方や行く末を読み解き、環境、政治、地方都市のあり方までを考える。(一財)日本地図センター客員研究員、(一財)地図情報センター評議員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査、日野市町名地番整理審議会委員。主著に『日本鉄道旅行地図帳』『日本鉄道旅行歴史地図帳』(いずれも監修/新潮社)『新・鉄道廃線跡を歩く1~5』(編著/JTB)『地形図でたどる鉄道史(東日本編・西日本編)』(JTB)『地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み1~3』『地図で読む昭和の日本』『地図で読む戦争の時代』 『地図で読む世界と日本』(すべて白水社)『地図入門』(講談社選書メチエ)『日本の地名遺産』(講談社+α新書)『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)『日本地図のたのしみ』『地図の遊び方』(すべてちくま文庫)『路面電車』(ちくま新書)『地図マニア 空想の旅』(集英社)など多数。


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