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長野電鉄の特急スノーモンキーの旅

なだらかな山並みを背景に、のんびりと走る

信州中野駅に到着する特急スノーモンキー

 飯山付近での所用からの帰り、JR飯山線で長野まで出ようとしたら、列車が出たばかりで、夕方なのに1時間半も列車がないことが判明した。北陸新幹線には長野駅から乗ることになっているので、どうしたものだろうかと思案していたら、ふと千曲川をはさんだ対岸に長野電鉄の信州中野駅があることに気付いた。最寄りの駅までクルマで送ってもらえることになっていたので、お願いしてみたら、15分程で行けるとのこと。かくして、長野電鉄を利用して長野駅まで行くこととなった。

特急スノーモンキーの行先標示板

 長野電鉄の信州中野駅は、特急停車駅でもあることから、白い駅ビルの堂々とした駅舎だった。次の列車は、この駅始発の特急スノーモンキー。元小田急ロマンスカーの特急「ゆけむり」には乗ったことがあるのだが、スノーモンキーは初めてだ。わずか100円の特急券をプラスして長野までの乗車券を買ってホームに出た。

スノーモンキー車内。成田エクスプレス時代とほとんどかわっていないようだ

 しばらくすると、長野駅からの特急スノーモンキーが到着した。これが折返しの長野行きとなる。車両は、かつてJR東日本の成田エクスプレスとして活躍した253系電車で、ぱっと見た感じでは、JR時代そのままのようだ。3両編成の先頭車両に乗り込むと、まんなかのテーブルをはさんだ4人掛け席を中心に、いわゆる「集団見合い」のクロスシートとなっている。数人しか乗りこまなかったので、全員が車両後半の進行方向を向いたシートに座り、車両前半の後ろ向き席には誰も座らない。席を確保して前方を俯瞰すると無人の席ばかりだった。あとで知ったことだが、最後尾の車両は、元グリーン車でゆったりした座席ですべて進行方向に換えられるとのこと。慣れた人は、料金が同じなので、迷わず元グリーン車に座るのかもしれない。それゆえ、空いているのは、この車両特有のことかもしれず、ある程度割り引いて考えなければならないだろう。

信州中野~小布施間の車窓

 定時に発車すると、電車はなだらかな山並みを背景にして、のんびりと走っていく。日没時間が近づいているので、西側に座ると眩しい。半分だけブラインドを降ろしつつも何とか車窓を眺めながら過ごした。

 10分程で、最初の停車駅小布施に到着。近年人気上昇の観光地だけあって、10人近く乗ってきた。相席を避けるためか、前半の進行方向後ろ向きの席にも何人か座り、賑やかになってきた。

 リンゴ畑の中を進み、須坂に停車した後、しばらくすると千曲川を渡る。村山橋と言って、かつては道路と一体となった風変りな鉄橋として有名だったが、近年、道路と線路は別々の橋となった。鉄橋の架け替えに合わせて路盤もよくなり、電車は気持ちの良い走りで通過していった。

 次第に農村風景が市街地の車窓となって行く。朝陽(あさひ)駅に停まったあとは複線区間に入り、都市近郊電車の様相を呈してきた。

 少し前まではJR信越本線だったしなの鉄道北しなの線の線路を跨ぎ、信濃吉田駅、本郷駅とこまめに停まると、やがて電車は地下に潜る。これから4つの駅は地下にあり、さながら長野市の地下鉄みたいだ。善光寺下駅は通過するものの、権堂駅、市役所前駅と各駅に停まって行く。気づくと車内はかなり席が埋まっていた。特急券が100円と安いせいか、学生らしき若者も目立つ。プチぜいたくといったところだろうか。

車体に張り付けられたスノーモンキーの巨大な写真

 信州中野駅から39分で終点長野駅に到着。ホームに降りて、車体を丹念に眺めると、最後尾車の側面には大きな猿の写真が貼ってあった。二匹の猿が温泉につかった滑稽な姿で、長野電鉄の終点湯田中駅近くにある地獄谷温泉の写真である。外国人観光客にも人気のスポットで、列車名のスノーモンキーは、これに由来する。小さなスノーモンキーのロゴよりもインパクトがある写真だ。

長野駅に到着したスノーモンキー。右に見えるのは元東急の普通電車

 飯山線の代わりに乗った長野電鉄だったが、特急電車ということもあり快適に過ごすことができた。機会があれば、久しぶりに湯田中まで乗り通して、次回は本物の猿たちに再会したいと思う。

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