紙の本は滅びない。アメリカでも。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

紙の本は滅びない。アメリカでも。

アメリカの読書風景②

日本以外の国でも、書籍の売り上げが10年以上も減り続ける状況から抜け出せない「出版不況」や、電子書籍の登場とスマホの台頭で紙の本が売れなくなっているという事実はあるのだろうか? アマゾンのリアル書店の出現に、全米の街角の本屋さんはどう対応しているのだろうか? 本屋に人が集まっているのだろうか? 世界の出版事情に詳しい大原ケイ氏の寄稿。

データから読み解く世界の書籍市場

 

 まずデータから、世界の書籍市場の「今」をのぞいてみたい。今春ロンドンで行われたブックフェアで、書籍のPOSデータを集計した「ブックスキャン」を61カ国で提供するニールセンが、2016年の統計を発表した。

 それを見ると、英語圏の中枢をなすアメリカとイギリスでは、Eブック(電子書籍)の勢いが衰えた分、紙の本の売り上げが盛り返していることがわかった。その一方でスペイン、イタリアといったEU負債国では減少している。このことから推察されるのは、紙の書籍の総売上に影響を与えるのはEブックの台頭よりも、その国の経済状態が大きいということだ。事実これまで飛躍していたブラジルも2016年にはガクンと落ちた数字になっているし、アイルランドは逆に10%近く増えた。

 ただEブックの売り上げが落ちてきたとはいえ、出版社を通さないセルフ・パブリッシングの本は相変わらず増えているし、キンドルやヌックといった電子書籍専用のデバイスでの売り上げが減っている一方で、スマホやタブレットでの売り上げは増えている。

次のページ電子書籍大国アメリカは?

KEYWORDS:

オススメ記事

大原 ケイ

おおはら けい

日本語の本も英語の本も同じぐらい読んできたバイリンガル。講談社アメリカ、ランダムハウス・アジアなど、日米双方の出版社に勤めた後、翻訳権のリテラリー・エージェントとして独立。現在はフィクション、ノンフィクションを問わず日本の著者の作品を英語圏の出版社に紹介するべく、東京とニューヨークを往復する日々。著作に『ルポ電子書籍大国アメリカ』(アスキー新書、2010)など。


この著者の記事一覧