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「吉祥寺」と「井の頭」という地名の由来、知ってる?

第1回 なぜ「多摩」というのか? その入り口の吉祥寺は!

「多摩」の入り口、「吉祥寺」の由来

(C)国土地理院/地理院タイル/標準地図

   東京23区の西端はJR中央線でいえば杉並区だが、その西隣は武蔵野市。多摩の最初のJR駅は吉祥寺である。若者の街として賑わい、「住んでみたい憧れの町」では、つねに上位にランクインするほど人気が高い。

 吉祥寺の地名は、吉祥寺という寺の名に由来する。吉祥寺は康正年間(1455~56)、太田道灌が江戸城を造営したとき、和田倉門内に吉祥庵を建てたのがはじまりという。

 その後、天正年間(1573~91)、徳川家康が大規模な江戸城へ修築するにあたって、吉祥庵を神田台(水道橋の北側)へ移し、吉祥寺とした。しかし、吉祥寺は明暦3年(1657)、振袖火事で焼失してしまう。

 吉祥寺は場所を駒込(文京区本駒込3)へ移して新築されたが、焼け出された門前町の住民たちは万治2年(1659)、茅が生い茂る武蔵野へ移り住む。新田を開発したあと、それまで親しんでいた吉祥寺にちなみ、吉祥寺村と名づけた。

井の頭公園。週末はたくさんの人でにぎわう。

 JR吉祥寺駅近くに井の頭公園があり、親子連れや若い人で賑わっている。公園内の池は「井の頭池」(三鷹市井の頭4)というが、これも不思議な地名である。

 寛永2年(1625)、三代将軍家光が遊興に訪れたときの逸話に由来する。供の者が池の湧水を沸かして茶を淹れ、家光に差し出したところ、それを飲んで満足した。池の水をほめ、水辺の辛夷の木に小刀で「井の頭」と彫り、「これからは井の頭というのがよい」といった。やがてこの名が定着したのだという。

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中江 克己

なかえ かつみ

北海道函館市生まれ。河出書房、思潮社などの編集者を経てノンフィクション作家。江戸を中心に、歴史の意外な側面に焦点を当てて、執筆をつづけている。



著書は『大江戸〈奇人変人〉かわら版』(新潮社)、『忠臣蔵と元禄時代』(中央公論新社)、『徳川将軍百話』(河出書房新社)、『日本史の中の女性逸話辞典』(東京堂出版)、など多数。ほかに染織文化にも造詣が深く、『色の名前で読み解く日本史』(青春出版社)、『歴史にみる日本の色』(PHP研究所)『江戸東京の地名散歩 歴史と風情を愉しむ』(ベスト新書)などの著書も多い。



 


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