「ライン」の高さでサッカーの良し悪しを判断してはいないか。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「ライン」の高さでサッカーの良し悪しを判断してはいないか。

ピッチ外から見るサッカーの落とし穴

J1プレーオフにあったラインの隙

 昨年のJ1昇格プレーオフ準決勝、僕が所属していたファジアーノ岡山が松本山雅FCを下した試合。ロスタイムの奇跡の決勝ゴールを忘れることはできません。その決勝点はとても興味深い形で生まれました。
 1-1で残り数分となり、あと1点取らなくてはならなかった僕たちは、センターバックの僕も前線に上がり、パワープレーを仕掛けることにしました。松本山雅FCのディフェンスは堅く屈強ですが、何か事故を起こすことを狙って前線に位置しました。

 それに対し、相手はラインを下げ、ペナルティーエリア内に何人ものブロックを敷いて、僕たちのパワープレーをことごとく防いでいきました。
 正直なところ、事故を起こせる可能性を感じないほど、松本山雅の守備陣は集中していました。僕も何度か競り勝つことはありましたが、そこにスペースはなく、時計だけが無常に過ぎていく感覚でした。

「僕のラストゲームか」

 との思いがよぎったとき、相手のクリアボールがファジアーノ岡山のゴールキーパーまでいきました。すると、松本山雅の守備陣はラインを少しだけ上げました。堅く、ほんの少しのスペースも見えなかった相手守備陣にエアポケットのような空間と時間が生まれました。そこを図ったようにボールがつながり、赤嶺選手の奇跡の勝ち越しゴールが生まれました。
 松本山雅FCの守備陣の「ラインを上げる」という選択は間違いではなかったと思います。サッカーにおいて難しいのは、本当に正解などないことです。ただ、たまたまその試合では、ラインを上げたことによって決勝点が生まれました。

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岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


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