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今さら聞けない、尿管、尿道、膀胱、前立腺。

ここが気になる人体の機能④

前立腺肥大で排尿困難に? 泌尿器系での男女違いは? 知っておきたい人体の機能を『人体解剖図鑑(ヴィジアル新書)』著・高野秀樹氏が徹底解説! 

尿管と膀胱の構造

 腎臓の糸球体でのろ過、尿細管での再吸収、尿細管分泌、そして集合管での尿濃縮を経て生成された尿は、腎臓のほぼ中央部にある腎盂へと送られる。その腎盂から膀胱までをつなぐ、尿が流れる管を尿管といい、成人でその長さは約25㎝、口径は約5㎜ある。

 尿管断面を見ると、外側から外膜、平滑筋の層、粘膜からなり、粘膜は移行上皮(尿路上皮)という伸展性のある特殊な上皮で覆われている。尿は、重力で下降するだけではなく、平滑筋が蠕動(ぜんどう)運動(波打つような動き)することで少しずつ膀胱へと運ばれる。

膀胱のイメージ。尿を貯留するため、伸縮性に
富んだ袋状の臓器である。

 左右の腎臓から伸びる尿管は、大腰筋の前部、精巣動脈(卵巣動脈)と並走し、腹部大動脈が左右に分岐した総腸骨動脈の前を横切って骨盤腔内に入る。その後、男性は精管の下を交差、女性は子宮動脈と交差して膀胱に達する。膀胱の後ろ側(背側)から膀胱壁を斜めに貫いた尿管は、尿管口から尿を膀胱内へと送り込む。なお、膀胱壁内を斜めに貫通する尿管の構造には、尿が逆流するのを防ぐはたらきがある。

 膀胱は、恥骨のすぐ後ろに位置する、尿を一時的に貯めておく臓器だ。そのため伸縮性に富んだ袋状をしており、成人で300〜500mLの尿を溜めることができる。断面は、内側から尿管同様の粘膜、3層の平滑筋、外膜となっていて、膀胱壁の厚みは尿が入っていないときで約1㎝、尿が溜まると平滑筋が引き伸ばされて3㎜程度にまで薄くなる。3層の平滑筋は全体が排尿筋として機能している。

 膀胱の出口(内尿道口)の先は尿道へと続いている。出口には、自分の意思とは無縁に収縮する内尿道括約筋と、自分の意思で動く外尿道括約筋が尿道を囲んでいる。これら括約筋は水門の役割をはたしている。ふたつの括約筋の構造には男女差があって(前立腺のある男性が女性よりも大きい)、男性のほうが尿漏れを起こしにくい構造をしている。

 膀胱に一定量(250mLほど)の尿が溜まると、膀胱壁にある感覚神経が刺激され、脊髄の排尿中枢を経て大脳にその情報が伝えられる。こうして尿意をもよおすのだが、最初は排尿を抑えるように大脳から指示が出ている。その後、意識的に排尿する場合は、大脳からの抑制指示が消え、副交感神経から膀胱壁に収縮が促され、内尿道括約筋には弛緩するよう指示が出される。かくして外尿道括約筋の弛緩、尿道の拡張を起こして排尿される。この一連を排尿反射という。こうしたしくみだからこそ排尿を我慢できるのだ。

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高野 秀樹

たかの ひでき

東京逓信病院

1972年生まれ、茨城県出身。東京逓信病院腎臓内科医長。医学博士。



総合内科専門医・指導医、腎臓専門医・指導医、透析専門医・指導医。1998年、北海道大学医学部卒業後、東京大学医学部付属病院、虎の門病院腎センター内科、亀田総合病院総合内科、日立製作所日立総合病院内科に勤務、東京大学大学院腎臓内科学専攻、日本医科大学病理学国内留学を経て現職。在学中、水海道さくら病院透析センター長就任。現在、IgA腎症などの腎炎や慢性腎臓病、腎不全の診療とその病理的研究に従事。共著に『病気&診療 完全解説BOOK:101疾患の診断・



治療から費用まで』(医学通信社)ほか多数。『東京逓信病院のおいしい腎臓病レシピ』(主婦の友社)を共同監修。



 


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