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「直系」というキーワードで読み解く、左翼・右翼・暴力団

日本の共産党、左翼、そしてマスコミも同じ特徴が!

日本では、どんな組織だろうと、組織ができあがってしばらくするといつのまにか直系化しているという「法則」がある。明治大学教授の鹿島茂教授が、世界史の深層や混沌とする現代社会の問題を、新刊『エマニュエル•トッドで紐解く世界史の深層』より解説します。 

 

日本のあらゆる組織が持つ「法則」

 日本では、どんな組織だろうと、組織ができあがってしばらくするといつのまにか直系化しているという「法則」があります。

 家族類型の論理、メンタリティーというものは個人と国家の間にある中間団体、すなわち政党、軍隊、官僚組織、学校、会社、宗教団体などに保存されやすいからです。

 その結果、政府や官僚組織などの直系家族理念と戦うはずの野党やマスコミ、それに労働組合、革命組織、左翼団体もみな直系化してしまうのです。例えば、共同体家族社会のロシア(ソ連)で生まれた共産党には、「細胞」という名の組織単位がありました。工場細胞、農村細胞、街頭細胞などと呼ばれ、地域や職場の隅々にまで指導命令のネットワークが張り巡らされていたわけです。国民が一様に並んで独裁に従う共同体家族社会ならではといえます。

日本の共産党、左翼と右翼、そして大手マスコミ

 今までに述べたように、日本の共産党も「細胞」方式を採用しましたが、名前倒れで機能しませんでした。直系家族社会の日本では、ヨコのネットワークの伝達を受けて個人それぞれが一斉に職務を遂行とはならず、上意下達のタテの命令系統になってしまうのです。現在の共産党では、もはや「細胞」という言葉そのものも使用されていません。また、共産党とは一線を画す新左翼、極左集団においても組織構造は直系になりがちです。日本の左翼は、日本独自で発展を遂げた直系家族的左翼と呼ぶべきものです。

 また、反政府を標榜する左翼マスコミも直系化を免れません。左翼的といわれた大手新聞や良心的出版社なども、その内部においては直系家族的な組織そのもののようです。

 では、戦後の右翼組織は直系家族的だったのかというと、こちらは不思議なことにそうではありませんでした。というよりも、直系家族的になるほど組織化されていなかったと言ったほうが正しいかもしれません。おそらく、戦後の右翼は、戦後の暴力団を中核にしていましたが、この日本の暴力団というのはまことにパラドキシカルなことに直系家族的というよりもアルカイックな共住核家族的な組織形態なのです。それは戦後の暴力団が西南日本を中心に組織されたものであることが関係しているかもしれません。

(『エマニュエル•トッドで紐解く世界史の深層』より構成) 

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  • 鹿島茂
  • 2020.01.05