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エマニュエル・トッドで読み解く「忖度」。これこそ、もっとも危険なファシズムの兆候である!

〜ナチズム発生の要因と父親の権威〜

「森友問題」がきっかけで、「忖度」という言葉が注目されています。実は、「官僚の忖度こそ、もっとも危険なファシズムの兆候」なのです。前編、後編の2回に分けて、明治大学教授の鹿島茂教授が、世界史の深層や混沌とする現代社会の問題を、新刊『エマニュエル•トッドで紐解く世界史の深層』より解説します。

 

■ナチズム発生を解明する要因

 第一次世界大戦(一九一四〜一九一八年)のあとにヒットラーのような人物があらわれたのは、ドイツが直系家族であることから簡単に説明する人もいるようですが、私はそのような解釈はとりません。というのも、(ドイツや日本のような)直系家族というのは縦型の権威主義と不平等を原則としますが、この二つの要因からだけではファシズム、なかんずくナチズムを解明できないからです。

 むしろ、直系家族の縦型の権威主義と不平等原則は、プロイセンや江戸時代の日本のような旧套墨守の極端な保守主義や、地域分権型の自民族中心主義に直結します。直系家族は、ファシズムやナチズムのような統合的、盲目的全体主義とは親和的ではありません。

 しかし、ファシズムやナチズムがドイツや日本のような直系家族地帯で発生したというのは紛れもない事実ですから、これを説明しなければなりません。

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  • 鹿島茂
  • 2020.01.05