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部活動に「達成感」はいらない――“ブラック部活”問題の根本にあるもの

【コラム】2020年からの学校と教師②

教師にとっても生徒にとっても大きな負担となりつつある「部活動」。昨今、その活動時間の長さが問題視されつつありますが、『2020年からの教師問題』(ベスト新書)の著者・石川一郎先生は、近年の部活動の在り方についてはもっと根本的な問題があると話します。詳しくお話を伺いました。

◆「勉強と部活動の両立」という言葉への違和感

 最近、「勉強と部活動の両立」という言葉をよく耳にします。文武両道を目指すスローガンとして使われることの多いこのフレーズですが、私はあまり好んで使いたいとは思わない。どうも「両立」という表現に違和感を覚えてしまうのです。
 勉強を頑張ること。部活動を頑張ること。それ自体は決して悪いことではありません。ただ、果たして勉強と部活動は切り離して考えるべき、質の異なる活動なのでしょうか? 私は、両者の本質は同じであるべきだと考えています。つまり、どちらも「学問」をすることを、活動の中心に据えるべきだと思うのです。

写真:photolibrary

 勉強はともかく、部活動で学問をするとはいったいどういうことか。
 たとえば、野球部に所属している男子生徒がいたとします。彼が部の活動の中で行き詰まってしまったり、プレーについて課題にぶつかってしまったときに、ただ今まで通り努力を積み重ねるだけでは、問題の解決には向かわないことも多いでしょう。そんなときには、どうすれば現状が改善するかを考える作業が必要となります。
 どうすればうまくなるのか、どうすればもっと良くなるのかを突き詰めて、成長したり、何かを獲得していく。それこそが部活動の醍醐味かつ意義なのではないでしょうか。ですから、本来であれば部活動は勉強と本質的に同じ「学問」活動なのです。

 さて、ここで最初の話題に戻ると、「勉強と部活動の両立」という言葉が内包する違和感というのは、勉強と部活動がそれぞれ全く別個の活動として位置付けられている上に、部活動における「学問」を重要視できていないことに対して感じているものではないかと思うのです。「勉強と部活動の両立」という言葉が蔓延している以上、残念ながら部活動における「学問」の必要性は、生徒にも教師にもあまり認識されていないと言えるでしょう。

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石川 一郎

いしかわ いちろう

「香里ヌヴェール学院」学院長、「アサンプション国際小・中・高等学校」教育監修顧問。「21世紀型教育機構」理事。1962年東京都出身、暁星学園 に小学校4年生から9年間学び、85年早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。暁星国際学園、ロサンゼルスインターナショナルスクールなどで教鞭を執る。前かえつ有明中・高等学校校長。「21世紀型教育」を研究、教師の研究組織「21世紀 型教育を創る会」を立ち上げ幹事を務めた。著書に『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)がある。


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