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“ブラック部活問題”解消に必要なのは、「地域」を味方につけること

【コラム】2020年からの学校と教師①

◆それでも部活動が負担になる、根本的原因

 地域と協力して部活動を運営していく仕組みができれば、教師の負担は減る方向に進んでいくでしょう。それが理想だとは思うのですが、しかし、実際にはなかなか実現されないことだと思います。というのも、部活動に割く時間が増加した根本的な理由は、単純な業務過多のみにはないと思うからです。

 

 そもそも、部活動が盛んになってきたのは、バブルに入る直前の1980年代半ばでした。ちょうど『タッチ』のアニメが放送された頃です。
 もちろんそれ以前にも部活動は存在していて、熱血先生が指導する滅私奉公的な部もたくさんありましたが、一方で部活動は自由活動として捉えられていました。それが、「部活動に入るのが普通」というような“部活全入”の考え方が、80年代半ばくらいから出てきたのです。学生運動が終息し、校内暴力が問題化していた時期ですから、「なんとか生徒の有り余ったエネルギーを部活動に注ぎ込んでもらって、活動を通した人間育成を」という思惑が背景にありました。だからこそ、それ以前はある程度生徒の自主性に任されていた部活動が、教師を主体に動く学校の重要な活動として扱われるようになっていったのです。

 部活動を通した人間育成とは、すなわちどのようなものかというと、「努力をすれば、いいことがある」という考え方を適用したものでした。たとえ勉強ができなくても、部活動を頑張れば、何かしらの達成感を得ることができる。努力と達成感を至上主義に据えてしまうやり方です。これは未だに部活動を行うにあたって、教師が積極的に取り入れている考え方で、これがあるからこそ、部活動に対して時間をかけざるを得ない状況が続いているのではと思われます。部活動にかかる問題は、予想以上に根深いのです。
 

◎このコラムの続きは、5月19日に更新予定です。

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石川 一郎

いしかわ いちろう

「香里ヌヴェール学院」学院長、「アサンプション国際小・中・高等学校」教育監修顧問。「21世紀型教育機構」理事。1962年東京都出身、暁星学園 に小学校4年生から9年間学び、85年早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。暁星国際学園、ロサンゼルスインターナショナルスクールなどで教鞭を執る。前かえつ有明中・高等学校校長。「21世紀型教育」を研究、教師の研究組織「21世紀 型教育を創る会」を立ち上げ幹事を務めた。著書に『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)がある。


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