「関わる“人”次第で、どこの国でも良いシューズは作れます」<br />日本のシューズブランド、mythography(ミソグラフィー)のコト |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

「関わる“人”次第で、どこの国でも良いシューズは作れます」
日本のシューズブランド、mythography(ミソグラフィー)のコト

モノ・ト・コト【第1回】ベイクルーズ プレス・青木志門が選ぶブランド&アイテムをピックアップ!

〈ミソグラフィー〉のシューズが出来るまでに、考えていること

編集 やや突っ込んだ話になりますが…、〈ミソグラフィー〉といえば立ち上げ時から日本企画&海外生産で、品質の良いシューズをお値ごろ価格で展開していたイメージがあります。各ブランドがメイドインジャパンに特化しがちな中、生産を海外に移した理由などがあれば教えてください。

宮城 そもそも、〈ミソグラフィー〉を立ち上げた会社の生産が中国だったんですね。そこに1年間デザイナーとして在籍する中で、中国内での生産背景や工場なども教えてもらったんです。工場の内部や、そこで作られる生地や技術にも触れて、海外での生産に慣れ親しんでいたというのは大きいですね。もちろんコストの面でも魅力的ではありましたが、その経験から自然と同じ工場を使うようになりました。

青木 それまでデザイナーとして関わってきた、工場や職人との信頼関係などもあったんですか?

宮城 そうですね。「日本で作った製品はキレイ」とみなさんおっしゃるんですが、必ずしもそうとは限らない。日本の職人さんがハンドメイドで作ったものでも、当然ガタがあるものもあります。大事なのは、場所ではなく誰が作ったかということだと思うんです。竹ヶ原敏之介さんというデザイナーが手掛けている〈フット・ザ・コーチャー〉というシューズブランドがあります。このブランドの生産は「宮城工業」というメーカーが請け負っているんですが、例えば知識のない一般の方がオーダーをしても、品質は良くてもどこかで見たような普遍的なデザインの靴が仕上がってきます。いくら「宮城工業」の技術力が高くても、それを〈フット・ザ・コーチャー〉として完成させているのは、竹ヶ原さんの力があってのことなんです。ですから、日本製だから作りが良いということでもなく、関わっている人次第でどこの国でもクオリティの高いシューズは作れるはずなんです。

編集 ブランドをプロデュースする、デザイナーの力次第、ということですね。

宮城 そうですね。少なくとも、僕はそう思っています。

編集 〈ミソグラフィー〉では、スニーカーソールと革靴のアッパーを組み合わせたいわゆる「ハイブリッドシューズ」を早くから提案されていました。今年2月にも〈ボナム〉とのコラボレーションでデッドストックの生地を使用したシューズを発表されるなど、他ブランドとは一線を画した独創的なクリエイションが目立っています。これらのデザインの、インスピレーションとなっているものはあるのでしょうか?

宮城 僕は、急に何かをハッと思いつくような天才肌ではありません(笑)。〈ミソグラフィー〉のデザインにおいて大事にしているのは、日頃からの“クセ”です。ひたすら靴のことしか考えていなかったショップ店員時代から、ひとつひとつの経験や物事を「何か靴に活かせないか」と考えるクセ付けを行なっていたんです。特定のものをひとつ決めてそれを参考にするという考え方ではないんですね。いきなりデザインを起こそうとしても、それまでの積み重ねがなければ良いものはできません。例えば、パッチワークを使ったアイテムに触れてって“いいな”って思ったら、そこから「どんな色が合うんだろう」「生地の組み合わせはどれが良いだろう」と考えを膨らましておく。そんな思い付きをストックしておいて、次デザインを引く時に使えそうなら落とし込む。インスピレーションの基と言われると悩みますが、強いて言えばそういうネタを探す“努力”ですね。

青木 デザインにアウトプットするために、日頃からのインプットがとても重要なんですね。

宮城 あとは、僕自身が年を取って着る服も変わってきたりとか、その時々での好みとか。自分にとって嘘になるようなものは作りたくないので、そういうものは出来る限りアイテムに反映させていこうと思っています。ブランド発足当時と今とでは、デザインも変わってきていますしね。


INFORMATION

■お邪魔したショップ
BONUM 表参道
住所:東京都渋谷区神宮前5−10−7 5107ビル1F・B1F
☎03−5428−6520
営業時間:11時〜19時半
定休日:日曜、祝日、年末年始
http://bonum.jp/

■お話を伺ったブランド
mythography/ミソグラフィー
2012年AWスタートの日本のシューズブランド。デザイナーは宮城秀貴。
ブランド名の“mythography"とは、英語で神話や神話芸術という意味を持つ。
グッドイヤーウェルト製法にこだわり、高いデザイン性とクオリティを維持しつつ、リーズナブルな価格帯を実現し、人気を呼んでいる。
http://www.mythography-shoes.com/

■Instagram
shimon_aoki(BAYCEWS プレス・青木志門)
bonum.jp(ショップ・BONUM表参道)
miyagi_hidetaka(mythography デザイナー・宮城秀貴)
mythography(ブランド・mythography)


後編【ミソグラフィーとボナムのコラボのコト】に続く

KEYWORDS:

オススメ記事