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月の誕生の秘密! 「ジャイアントインパクト」

ジャイアントインパクトが最も有力? 月はどうやってできた?

 地球から最も近く、肉眼でその変化を確認できる月。私たちにとって身近な月について皆さんはどれくらい知っていますか?

 そんな月の誕生の話です。

 44億5000万年ほど前に誕生した月の起源については、これまでいくつかの説が唱えられてきました。月は地球とは別のところで誕生し、地球の近くを通過したときに地球の引力に捕らえられたという「捕獲説」。誕生したばかりの地球が速く自転していたため、マントルの一部が分離して月になったという「親子説」。月は原始地球といっしょに誕生し、ともに成長してきたという「兄弟説」……などがあります。

いっぽうで、月には次のような特徴があることがわかっています。

①月は、ほかの惑星の衛星と比較すると大きくて(地球半径の4分の1)、遠く(38万㎞離れている)を比較的速い速度で公転している。

②月と地球は、ほぼ同じ材料でできている。

③月は地球に比べて水やナトリウム、カリウム、亜鉛、鉛などなどの揮発性物質(蒸発しやすい物質)が極端に少ない。

④月には地球のように大きな金属の核がない。

⑤形成直後の月面は、溶けたマグマに覆われていた。

 これらの条件から、月の起源としてもっとも有力視されているのが、ジャイアントインパクト(巨大衝突)説と呼ばれるものです。

 それによれば、地球に火星サイズの原始惑星(テイアと呼ばれる)が斜めに衝突し、飛び散った地球のマントル部分の一部と衝突した天体が合体して現在の月になったといいます。

 地球とテイアの衝突を再現したコンピュータ・シミュレーションによれば、まず、テイアが地球に衝突し、飛び散った地球のマントル物質が溶けて円盤状に地球を取り巻きます。このとき、残りの物質は、地球の重力に引き寄せられて落下しました。次いで、円盤状に地球を取り巻いているマントル物質の破片は、衝突エネルギーによって砕けた高温状態の物質で、衝突と合体を繰り返し、やがて成長して月になったというシナリオです。

 このため、形成初期の月はドロドロに溶けていて、表面はマグマオーシャンになっていました。

 そして時間が経って冷えていくにしたがい、軽い斜長石が浮き上がってきて固まり、月の「高地」と呼ばれる領域になったと考えられるのです。

 何とも壮大な月の誕生の話。地球に多大な影響を与える月にはまだまだ謎が満ちているのです。

ジャイアントインパクトのイメージ。約44 億5000 万年前、できたばかりの地球(左)に火星サイズの原始惑星(テイア) が衝突、双方の惑星から飛び散った物質をもとにして月が形成された。 © NASA/JPL-Caltech

<『46億年の地球史図鑑』③>

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高橋 典嗣

たかはし のりつぐ

1958年、東京生まれ。日本スペースガード協会理事長。明星大学、神奈川工科大学、麻布大学、武蔵野大学非常勤講師。明星大学理工学部物理学科卒業。日本大学大学院博士前期課程で宇宙人間科学、千葉大学大学院博士後期課程で公共研究を専攻。日本学術会議天文学国際共同観測専門委員、日本学術観測団団長(ザンビア皆既日食)、学校科目「地学」関連学会協議会議長、天文教育普及研究会副会長などを歴任。著書に『46億年の地球史図鑑』(ベストセラーズ)『138億年の宇宙絶景図鑑』(ベストセラーズ)、『巨大隕石から地球を守れ』(少年写真新聞社)、共著に『大隕石衝突の現実』(ニュートンプレス)ほか多数。


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