甦ったレスターの秘密と岡崎慎司。「“守備的FW”としての成熟、FWとしての不満」 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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甦ったレスターの秘密と岡崎慎司。「“守備的FW”としての成熟、FWとしての不満」

レスターが昨季の強さを取り戻した。日本代表ストライカーの貢献とは

「僕はこのビッグマッチに賭けている」

 得点がとれないという意味では、日本代表でも同様だった。昨年6月に代表通算49得点目をマークして以降、50点目がとれていない。そのことが影響したわけではないだろうが、先発出場機会も徐々に減っていた。最終予選突破において最重要戦と言われていた3月23日対UAE戦でもベンチスタートだった。
 白装束に身を包んだ男たちで埋め尽くされるスタンドは一見、異様な光景に映るが、チームマフラーを掲げて応援する姿は、やはり世界共通だった。
 久保裕也、今野泰幸のゴールが決まったのち、岡崎は途中出場し、試合を終わらせた。代表チーム内での自分がおかれた立場について考えることもあるだろうが、とにかく、この夜は勝利を心から祝っていたに違いない。
 そして、3月28日、埼玉スタジアムでのタイ戦。UAE戦で先発していた大迫勇也の負傷離脱もあり、岡崎は先発で1トップのポジションに立った。香川の先制点につづき、岡崎がゴールを決める。代表通算50得点は、彼の代名詞でもある“ダイビングヘッド”で、マークした。
「自分のFWとしての感覚を甦えさせるという意味でも、ダイビングヘッドで決めれてよかった。50点目ですけど、僕は毎試合フレッシュな気持ちで戦ってきた。ここでいったんリセットして、これからも積み上げていきたい。代表での1トップというポジションに対しても欲が出てきた。このポジションでゴールを獲りに行きたい。代表とレスターでは、求められることも違う。代表ではゴールが求められているし、レスターに帰れば、レスターでの役割がある。そんなふうにいろんな役割があるというのは、本当にありがたいなと思います」

 レスターの連勝を支えていると言っても過言ではない岡崎だが、その立場は危ういものだと話す。
「僕は、今日勝たないと、次は外されるという立場。だから毎試合命がけの勝負をしている」
 岡崎のレスターでの役割は「チームを勝たせること」だと言う。その勝利を導く仕事のひとつの真価が問われるのが、4月12、18日に行われるチャンピオンズリーグ準々決勝対アトレチコマドリード戦だ。
「なんのために頑張っているかといえば、試合に出るためだけじゃない。そこで活躍したいから。次のビッグマッチ(準々決勝)で自分が頑張ってきた意義が問われる。自分がヨーロッパへ来て6年目で、初めてチャンピオンズリーグのベスト8の舞台に立つ。そこで結果を出すためにやってきたと言っても過言じゃない。それはワールドカップとも同じ。だから僕はこのビックマッチに賭けたい」
 ブンデスリーグで二桁得点をマークし、意気揚々と挑んだ2014年ワールドカップブラジル大会での惨敗が、岡崎をプレミアリーグへと駆り立てた。新しい自分を構築するための挑戦。その途中経過をチャンピオンズリーグの舞台で示してくれるだろう。
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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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