酒井高徳がピッチで見せた闘う姿勢。歩む新たな「レジェンド」への道 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

酒井高徳がピッチで見せた闘う姿勢。歩む新たな「レジェンド」への道

ハンブルガーSVを生まれ変わらせた男

新キャプテンが見せた姿

 日本代表でもブンデスリーガでも長く右サイドバックでプレーしていた酒井は、ボランチとして先発。昨年10月30日以降、ここが彼のポジションとなっている(第16節から6試合はサイドバックで出場)。
 22分に先制点を許すものの一歩も引かず、戦う姿勢を示し続けたハンブルグは36分に同点弾を決め、80分には酒井のインターセプトから始まる攻撃で逆転に成功し、勝利を飾った。
「最後まであきらめずに、後半はほとんど相手にチャンスを作らせなかった。後半にかけて集中力が増したというのが勝因だったと思います」
 引き締まった表情で快勝を振り返る酒井は自信に満ちていた。90分間、チームメイトを叱咤激励し、攻守に渡り、指示を出し続けた。後半、CKが2本続いたときには、ゴール裏のサポーターに向けて、腕をまわし、サポートを呼びかけた。
「本当に、ファンが力をくれているとここ最近改めて感じる。ここだと思ったから。そのタイミングで『お前らがここで押さないと俺ら負けるぞ』くらいの気持ちで煽ってみました」
 この日の結果でも順位は16位と変わらなかったが、勝ち点は14位と同じ。12位のマインツとは勝ち点差3ポイントまで迫っている。それでも気を抜くことはない。
「最後の試合が終わるまでは振り返らずにやっていきたい。振り返る時間も実力も立場もないというのは、みんなわかっている。今日みたいな泥臭い試合が自分たちの姿だというのもわかっていると思うから」
 迷いなくきっぱりと語る酒井が漂わせる空気には、若手ではない頼もしさがあった。

 スコットランドリーグのセルテックにおける中村俊輔など、欧州でプレーする日本人のなかでにもレジェンドと呼ばれる選手はいる。酒井もまた、ハンブルガーSVの歴史に名を刻むキャプテンになれるかもしれない。

KEYWORDS:

オススメ記事

寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


この著者の記事一覧