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鴨川の江ノ島!? 源頼朝伝説が残る、仁右衛門島を知っているか

地名で掘り下げる千葉県の歴史 地名でたどる源頼朝伝説③

全国6位の人口を抱える千葉県の奥深い歴史。「地名の由来」シリーズでおなじみ谷川彰英氏の最新刊、『千葉 地名の由来を歩く』から源頼朝伝説の地をたどる。

(3)仁右衛門島  鴨川市

 わずか一か月しか滞在しなかったのに、千葉県下には頼朝伝説がまるで雨後の筍のようにあちこちに誕生した。おそらく、鎌倉幕府を開いて天下に号令をかけた源頼朝にあやかろうと考えた人々の思い・願いがそうさせたのである。

 伝説というものはそういう意味では史実ではないにしても、その土地に生きてきた人々の思いを今に伝える貴重な財産であると言える。

 その伝説の一つが、鴨川市の仁右衛門島(にえもんじま)に残る頼朝伝説である。鴨川市太海海岸から200メートル離れた島で、日蓮上人や頼朝の伝説で知られている。

▲仁右衛門島(鴨川市)

 実はこの仁右衛門島には初めて足を運んだ。単なる観光地だという思いがあったのだが、まったく違った印象を得た。湘南の江の島のように橋続きで渡れるのだと思い込んでいたが、何と懐かしい渡しの舟で運んでくれる。

 船頭さんの話を聞いてまたびっくり。「仁右衛門島」は「平野仁右衛門」という人物が鎌倉時代から個人で所有している島で、今もその「平野さん」が管理しているという。現に島の頂上部に平野家の屋敷が存在している。スタッフに訊いたところによると、昔は島の海辺にあったのだが、津波で流されて今は島のいちばん高い所にあるのだという。

 日蓮上人が旭を拝したという神楽岩のすぐ下に、頼朝が夜襲を避けて身を潜めたという洞窟がある。今は稲荷大明神が祀られているが、確かに深い洞窟で身をひそめる場所としては格好であったろう。隣には「頼朝公」という石碑まで建てられている。

▲頼朝が身を潜めたと伝えられる洞窟(稲荷大明神)

 伝説は伝説として受け止めておきたいが、この島が代々平野仁右衛門という個人名で引き継がれてきているという事実のほうが重く映った。もう少し早く来るべきであった。

▲たどってみた、頼朝伝説由来の地名 

 【『千葉 地名の由来を歩く』より構成】

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谷川 彰英

たにかわ あきひで

筑波大名誉教授

1945年長野県生まれ。ノンフィクション作家。東京教育大学(現・筑波大学)、同大学院博士課程修了。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学教授、理事・副学長を歴任するも、退職と同時にノンフィクション作家に転身し、第二の人生を歩む。筑波大学名誉教授。日本地名研究所元所長。主な作品に、『京都 地名の由来を歩く』シリーズ(ベスト新書)(他に、江戸・東京、奈良、名古屋、信州編)、 『大阪「駅名」の謎』シリーズ(祥伝社黄金文庫)(他に、京都奈良、東京編)『戦国武将はなぜ その「地名」をつけたのか?』 (朝日新書)などがある。

 

 

 

 

 

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  • 谷川 彰英
  • 2016.10.08