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北部九州勢力のアキレス腱、地勢上の弱点とは?

シリーズ『ヤマト建国は地形で解ける』⑤

北部九州支配の要、日田

 興味深いのは、ヤマトに纒向遺跡が誕生した時代とほぼ並行して、日田盆地の北側の高台に、政治と宗教に特化された環濠(あるいは環壕)集落が出現していて( 小迫辻原(おざこつじばる)遺跡)、纒向の盛衰とほぼ重なっていること、遺跡から畿内と山陰系の土器が出土していたことだ。
 ヤマト政権は、日田を奪っていたようなのだ。この事実は無視できないし、ヤマト建国の目的や過程が、日田から見えてくるのではあるまいか。

 ちなみに、日田に楔を打ち込むことで、北部九州は身動きがとれなくなることは、戦略家ならみな分かっていたようだ。
 近世に至っても、徳川幕府は北部九州の地政学を良く心得ていて、日田を天領(幕府直轄領)にしている。
「東の政権」は、日田を必要としたのだ。

 そして、弥生時代後期、北部九州の諸勢力は、自身の弱みとヤマトの強みを知っていたからこそ、鉄を独占しようと考えたのだろう。
 北部九州は、「積極的にヤマトを締め上げる策」に出たようなのだ。ここで出雲と吉備が鍵を握ってくる。
 シリーズ『ヤマト建国は地形で解ける』⑥に続く。

『地形で読み解く古代史』より構成】

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関 裕二

せき ゆうじ

 



1959年生まれ。歴史作家。仏教美術に魅了され、奈良に通いつめたことをきっかけに、日本古代史を研究。以後古代をテーマに意欲的な執筆活動を続けている。著書に『古代史謎解き紀行』シリーズ(新潮文庫)、『なぜ日本と朝鮮半島は仲が悪いのか』(PHP研究所)、『東大寺の暗号』(講談社+α文庫)、『新史論/書き替えられた古代史』 シリーズ(小学館新書)、 『天皇諡号が語る 古代史の真相』(祥伝社新書)、『台与の正体: 邪馬台国・卑弥呼の後継女王』『アメノヒボコ、謎の真相』(いずれも、河出書房新社)、異端の古代史シリーズ『古代神道と神社 天皇家の謎』『卑弥呼 封印された女王の鏡』『聖徳太子は誰に殺された』『捏造された神話 藤原氏の陰謀』『もうひとつの日本史 闇の修験道』『持統天皇 血塗られた皇祖神』『蘇我氏の正義 真説・大化の改新』(いずれも小社刊)など多数。新刊『神社が語る関東古代氏族』(祥伝社新書)



 


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