執念なきものに発明はない…「チキンラーメン」が生まれた瞬間 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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執念なきものに発明はない…「チキンラーメン」が生まれた瞬間

【連載】「あの名言の裏側」 第7回 安藤百福編(2/4)「ひらめき」は身近なところにある

 さっそく、味付けした麺を針金と金網を使って自作した型枠に入れて、油で揚げてみたところ、麺はほぼ完全乾燥となり、長期保存にも耐える状態になりました。また、お湯を注ぐと、麺の表面にできた細かな穴から水分が吸収され、柔らかく復元されました。大ヒット商品「チキンラーメン」の原型が完成した瞬間でした。
 この麺を油で揚げる製法は「瞬間油熱乾燥法」と命名され、即席麺の基本的な製法特許として登録されることになるのです。
 安藤氏は、印象的な言葉をのこしています。

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発明はひらめきから。ひらめきは執念から。執念なきものに発明はない。
(安藤百福発明記念館編『転んでもただでは起きるな! 定本・安藤百福』より)
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 安藤氏の開発姿勢をひと言で評すなら「執念」に他なりません。その献身と精神力に脱帽せざるを得ないでしょう。しかし、「常人には真似できない」と軽々に他人事にしてしまうのも、少し違うような気がします。結局、安藤氏がインスタントラーメンの開発に成功したのも、日々の積み重ねがあればこそ。失敗のなかから微かな光明を見出し、昨日より今日、今日より明日と前に進み続ける。そうした姿勢を失わなければ、人は成長し続けること、大きな仕事を成し遂げることができるのだ──安藤氏は自身の体験を通じて、我々にそう語りかけているように思えてなりません。
 誰にとっても挫折は恐怖であり、失敗は痛いもの。だから人はすぐに「心が折れた」「もういい。諦めた」などとのたまい、挫折や失敗から逃げようとします。しかし、逃げてしまっては、そこから1ミリも前に進みません。ときには、足がすくんで立ち止まってしまったこともあるでしょう。ただ、それでもせめて前だけは向いていたいものです。

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漆原 直行

うるしばらなおゆき




1972年東京都生まれ。編集者・記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中より若手サラリーマン向け週刊誌、情報誌などでライター業に従事。ビジネス誌やパソコン誌などの編集部を経て、現在はフリーランス。書籍の構成、ビジネスコミックのシナリオなども手がける。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』、『読書で賢く生きる。』(山本一郎氏、中川淳一郎氏と共著)、『COMIX 家族でできる 7つの習慣』(シナリオ担当。伊原直司名義)ほか。

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