アメリカ抜きで発効の可能性は? 二国間FTAという手もある? 3分で分かるトレンドワード【TPP】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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アメリカ抜きで発効の可能性は? 二国間FTAという手もある? 3分で分かるトレンドワード【TPP】

【TPP】を慶應義塾大学教授・渡邊頼純氏が徹底解説③

●アメリカがいなくなることで、秩序が一気に崩れる危険性も

 

シズカ…なるほど。でもアメリカ抜きでTPPをやるわけにはいかないんですか。

渡邊…TPPの発効条件としては12カ国のGDPの85%を占める、少なくとも6カ国以上の手続きが必要になります。アメリカ1国のGDPだけで全体の60.4%を占めますので、現実的にアメリカ抜きでは成立しません。しかし、その次の段階として12カ国からアメリカを抜いた12-1=11の「イレブンカントリーズ」という案も出てくるかもしれません。現にメキシコやニュージーランドはそういうことを言っています。

トオル…メキシコはアメリカ抜きのTPPに乗り気なのですか。

渡邊…「乗り気か」と言われれば微妙ではあります。メキシコはトランプの勝利後、一旦はそういったスタンスを見せましたが今はトーンダウンしています。とにかくアメリカが抜けてしまうと、これまで12カ国間の合意の上で成り立っていた「ガラス細工」が壊れてしまう。秩序が崩れて各国が色々な要求をしてくることも考えられます。例えばベトナムが、いま日本が要求している自動車関税の撤廃を反故にしてくるかもしれない。あるいはオーストラリアが「アメリカがコメを日本に8万トン輸出できるのにうちは7千トンしかない、もう少し増やしてくれ」と言うかもしれない。ようするにアメリカのTPP離脱はパンドラの箱を空けてしまうようなもので一気に各国の欲望が噴出してくる可能性がある。

シズカ…なるほど、単純にアメリカだけ抜いてやればいいというわけにもいかないのですね。

渡邊…日本としても当然アメリカにはTPPに参加してほしい。なんと言っても世界一の経済大国、最大の貿易相手ですから。ただ一方で日本は、TPP参加国ではアメリカとニュージーランドを除く9カ国とは、冒頭にお話したFTA(自由貿易協定)を2国間で結んでいます。よしんばTPPが上手くいかなかったとしても、準備は出来ているという見方もあります。

シズカ…じゃあ日本はアメリカとも個別にFTAを結んでおけばいいんじゃないんですか。

 
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