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愛人契約:55歳女性×55歳男性 極めて合理的な売買春の世界

見えない買春の現場 「JKビジネス」のリアル 第5回

「なぜ彼女たちは裸になったのか」など、性を売る側の女性にばかりが注目されがちな売買春の現場だが、もう一方の当事者である男性側に目を向けることによって、見えてくるものはあるのか!?「見えない買春の現場 『JKビジネス』のリアル」を2月9日に刊行。「性の公共」をつくるという理念の下に、現代の性問題の解決に取り組んでいる坂爪真吾氏に語っていただいた。

 

■居酒屋で新メニューを勧められて『じゃあお願いします』と答える感覚

 買春男性を論じる上で外せない媒体として、月刊誌『裏モノJAPAN』の編集に携わっていた鈴木俊之さんに、これまで取材や編集の過程で接してきた買う男たちの実像について話を伺った。

 買う男性もそうですが、売る女性の動機を掘っても何も出てこないと鈴木さんは語る。鈴木「例えば、ホストクラブに通う女性に動機を尋ねても、『イケメンだから』『行くとテンション上がるから』といった表面的な答えが返ってくるだけだと思います。そこからホストに行く人はこういう特徴があり、行かない人にはこういう特徴がある…とカテゴライズすることは難しいでしょう。せいぜい『キャバ嬢や風俗嬢は、夜の街をよく歩くこともあり、ホストに行きやすい』といった、対象との親和性やアクセシビリティについて言及できる程度でしょう。

『フーゾク噂の真相』という連載の中で、援交デビューした女の子との会話の記録を載せたことがあります。彼女が身体を売ることを決断した時の会話の流れを分析すると、居酒屋で新メニューの唐揚げを店員から勧められて『じゃあお願いします』と答える瞬間に近い。『せっかくだし、まぁいいか』というテンションです。

 メディアやライターは『身体を売る女性の心の揺らぎや葛藤』的な描写を求めたがりますが、実際に女性に『どんな葛藤があったのですか?』と聞いても、何も出てこない。『就活も始まるし、金が必要だからやろうか。でもフェラとかはきついから手だけでやるか』みたいな感じ。有名大学に通っている手コキ嬢とかに話を聞いても、全然つまらない話しか出てこないのではないでしょうか。売る女から葛藤の言葉を引き出して言語化しようとしても、できない。これは買う男も同じでしょう。
 出会いカフェで茶飯(食事のみのデート)にこだわっているんだけれども、しゃべった男がたまたま感じ良くて、『この人だったら、まぁいいかな』と思ってその日だけ寝た、という女性も少なくないはずです。

 同様に、一回だけ買ったことがあるという男性もいます。売ることや買うことを明確に意識したり、習慣化している人はむしろ少ないかもしれません。一回も買ったことが無い人と、一回だけ買ったことがある人の間にどれだけの違いがあるかは微妙です。買う男性をモンスター化しても仕方が無い。
 だから『なぜ買うのか』『買うのに躊躇しないのか』といった質問はあまり意味が無い。買う・買わないの間に、明確な線引きは無い。言うなれば『空気』があるだけです。『あの街には売春がある』という感じの空気があり、売る側も買う側も裏表がない。日常と買春が地続きになっている」

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坂爪 真吾

さかつめ しんご

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。



新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店の待機部屋での無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『はじめての不倫学』(光文社新書)などがある。


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  • 2017.02.09