五郎丸歩はいま――。欧州最高峰リーグに挑戦中、“ラストチャンス”をいかせるか。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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五郎丸歩はいま――。欧州最高峰リーグに挑戦中、“ラストチャンス”をいかせるか。

フランス「TOP14」に挑戦した五郎丸歩。続く試練の日々。シーズン終盤の巻き返しに期待!

元日本代表FB(フルバック)五郎丸歩。2015年、イングランドで開かれたラグビーワールドカップにおいて、不動の「15」番として南アフリカ戦を含む3勝に大きく貢献。プレースキック前の「ルーティーン」である「五郎丸ポーズ」も大きな話題を呼んだ。最近、あまりラグビー選手として活躍を耳にしなくなった五郎丸はいま、どういう状況に置かれているのか。

持ち味を出せず、試練の日々が続く

 

 2015-16シーズン、トップリーグのヤマハ発動機ジュビロで3度目の得点王に輝き、2016年はオーストラリアのスーパーラグビーチーム、レッズに在籍。しかし、なかなか出番に恵まれず、昨年5月、日本チームであるサンウルブズ戦で右肩を脱臼する大けがを負ってしまうなど十分な活躍はできなかった。

 それでも五郎丸は、欧州に挑戦の舞台を移した。今シーズンから、ヨーロッパのクラブ王者に3度輝いているフランスの強豪RCトゥーロンへと移籍。キッカーとしての高い能力を評価されてのことだった。「RCトゥーロンからオファーが来て断る理由がなかった。声を掛けていただいて名誉なこと。壁はもちろん高いですが、そこにチャレンジするに値するものがある」(五郎丸)

 昨年8月下旬にフランス「TOP14」のシーズンは開幕したが、けがが癒えずまだリハビリを続けていた。チームの15番には、世界有数のFBの一人、ウェールズ代表リー・ハーフペニーがおり、五郎丸にはなかなか出場の機会が回ってこなかった。

 傷も癒えて、やっとチャンスが回ってきたのは昨年11月のこと。6日リヨン戦で途中出場し、13日のホームのスタッド・フランセ戦だった。11月は世界的に「ウィンドウマンス(=テストマッチ月間」であり、FBハーフペニーはウェールズ代表に招集され、他のライバルの負傷などの状況も後押しした。五郎丸は日本人BKとして初めてとなった「TOP14」の舞台で、安定したプレーを披露し、チームの勝利に貢献した。

 「初めてトゥーロンのファンの目の前で80分間プレーできて、チームメイトに感謝しています。プレー自体には良し悪しはありますが、15番をつけて80分プレーできたことを嬉しく思います!」(五郎丸)

 ただ、続く11月20日のカストル戦も先発したものの、後半8分で途中交代。12月、ハーフペニーが代表からチームに戻ってきてからは、やはり、出場機会は減少。クリスマス休暇で主力を温存した12月23日のモンペリエにも3試合目の先発出場を果たしたが、ノックオンやダイレクトタッチなどミスを多発してしまい、敗因の一つを作ってしまったことは否めない。

 1月22日現在、今シーズンの五郎丸の「TOP14」の出場は4試合で184分、タックル数は15本(成功率66%)、パスは10回、ランは103m、トライはまだ挙げられておらず、得意のプレースキックもまだ任されていないため、無得点に終わっている。

 また欧州クラブ王者を決める「ヨーロピアンラグビーチャンピオンズカップ(旧ハイネケンカップ)」にもまだ、1試合も出場することはできていない。ただRCトゥーロンはベスト8に進出したため、まだ出場の可能性はある。

 FB五郎丸は苦しんでいると言えよう。正直、シーズン序盤はケガをしていたこともあり、なかなかコーチ陣やファンの心をつかむことはできていない。

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斉藤 健仁

さいとう けんじ

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365 」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。


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