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キングコング西野が語る、本が売れない理由

第1回 キングコング西野亮廣の「モノの売り方・ヒトの売り方」

本を生活必需品にするにはどうするか

――当時はCDが「生活必需品」になっていたということですか?

 少なくとも僕の学生時分はそうでした。おしゃれな部屋を作ることで、友達とのパワーバランスが変わるので。ラックが埋まっていて、知らないような音楽が並んでいるのを友達が見たら「こいつスゲェ」となって、翌日から、これまでよりも少し上の立ち位置にいけた。
 じゃあ本をそんな「生活必需品」にするためにはどうするか。結論から言うと、本を「お土産」にすることだと思ったんです。
 たとえば、演劇のパンフレットって本よりも薄くて2000円くらいするのに、劇場ロビーでは超売れる。シンガポールのマーライオンの置物だって売れる。あと、僕が小学校の修学旅行で買った、広島県の「宮島」の三角形のペナント。いま思えばいらないんですよ(笑)。でも買ったんですみんな。
 なぜか、人は作品にはお金を出さないけど、思い出にはお金を出す。お土産は買う。これだけ時代が変わってきているのに、お土産屋さんって潰れてないじゃないですか。
 僕らがお土産を買ってしまう理由は、お土産が『思い出を思い出すために必要だから』。お土産は思い出を残す為の装置であり、生活必需品だと思ったんです。つまり、パンとか牛乳と同じカテゴリーなんだって。

――でも本屋さんで思い出を作ることって難しいんじゃないでしょうか?

 はい。ですので、本は本屋さんで売れたらラッキー、くらいに思っておいて、売り場を本屋さん以外に拡張しちゃえばいいと思います。作品をお土産化するために、必要なのは、演劇だとか、シンガポールだとか、宮島といった『体験』です。まずは、本の体験をデザインしちゃう。
 

『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)

 僕の場合は絵本を描いているので、家の倉庫に大量にあった絵本の原画を無料でリースして、全国どこでも誰でも「西野亮廣原画展」を開けるようにしました。長崎のサラリーマン、横浜のOL、名古屋の中学生、本当に誰でもです。そして、その原画展の出口で絵本を売ってもらいました。
 つまり原画展の「お土産」、グッズとして絵本を置いたんです。そしたら飛ぶように売れたんです。原画展さえ続ければ、「本が売れなかった」という可能性がゼロになります。あとは「どの期間で10万部を売るか?」という時間の問題だけで、本の売り上げが止まるというのは理論上ありえない。

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西野 亮廣

にしの あきひろ

1980年兵庫県生まれ。お笑いコンビ「キングコング」として漫才をするほか、トークライブをしたり、絵本を描いたり、個人でも活動。

著書に、絵本『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』『えんとつ町のプペル』、小説『グッド・コマーシャル』、ビジネス書『魔法のコンパス』がある。


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  • にしの あきひろ
  • 2016.10.21