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ついに戦闘停止!
白旗をあげるロシア艦

日露戦争の真実 日本海海戦の戦略を読み解く 第14回

 5月28日早暁、鬱陵島(うつりょうとう)に集結していた連合艦隊主力は、バルチック艦隊を掃討するために出撃した。敵艦隊は夜戦の魚雷攻撃で大半が沈み、戦闘能力があるのは第3戦艦隊(司令官・ネボガトフ少将)の旗艦「ニコライ1世」、装甲海防艦「セニャーウィン」「アブラクシン」くらいだった。これに第1戦艦隊で唯一残った戦艦「アリョール」、第2巡洋艦隊「イズムルード」が加わり5隻の陣形を組んでいた。

 午前9時30分ごろ、連合艦隊は第3艦隊を鬱陵島東方で捕捉した。午前10時10分、敵艦隊との距離が8000メートルになったところで、東郷司令長官は一斉砲撃を命じた。敵艦の応戦はない。秋山参謀は双眼鏡で「ニコライ1世」が白旗を掲げているのを確認した。

「敵は降伏したようですが…」

「国際法では、降伏の証(あか)しとして機関をとめ、停止しなくてはならない」

 東郷は冷静な口調で言った。午前10時30分過ぎ、「イズムルード」は北へと逃げ去ったが、「ニコライ1世」以下残りの艦船は完全に停止した。

 秋山は軍使として「ニコライ1世」に移乗し、ネボガトフ少将と交渉した。午後1時40分ごろ、「三笠」に乗り移ったネガボトフと幕僚は東郷と降伏の条件について話し合い、合意に達した。

松田 十刻

まつだ じゅっこく

1955年、岩手県生まれ。立教大学文学部卒業。盛岡タイムス、岩手日日新聞記者、「地方公論」編集人を経て執筆活動に入る。著書に「紫電改よ、永遠なれ」(新人物文庫)、「山口多聞」(光人社)、「撃墜王坂井三郎」(PHP文庫)など。


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