前述したように、私たちは、生きるためにブドウ糖と酸素を反応させてエネルギーをつくりだしている。だから糖質は必須だが、必要以上に摂れば、エネルギーとして使われなかったブドウ糖が余る。
 血中にブドウ糖が余っていると、血糖値が上がりすぎないように膵臓からインスリンというホルモンが出てくる。そして、インスリンの働きで、ブドウ糖は細胞内にしまい込まれていく。
 このときに、最初はブドウ糖がグリコーゲンに替えられ、肝臓や筋肉の細胞に貯蔵される。こうしたストックがあるから、山で遭難してなにも食べられなかったとしても生き延びることができる。
 しかし、ブドウ糖がグリコーゲンとしてストックできないほど余ってしまうこともある。それほど余ったなら、そのまま捨ててしまえばいいのだが、飢えていた時代のDNAは、その貴重なブドウ糖をなんとかして体内に保存しようとする。
 ただし、ブドウ糖のままで保存したのでは効率が悪い。
 というのも、ブドウ糖一グラムあたりのエネルギー量は約四キロカロリー。対して、脂肪一グラムは約九キロカロリーだ。ブドウ糖を脂肪に替えることで、倍以上のエネルギーを効率的にストックできる。
 だから、脂肪として体内に溜め込む。これが太るメカニズムである。
 つまり、糖質を摂りすぎてブドウ糖が余るから太るのだ。

◆糖質制限でやせるメカニズム

 では、ここで糖質制限をするとどうなるだろうか。糖質が入ってこなければ、ブドウ糖が不足して必要なだけのATPをつくりだせない。そこで、貯蔵していたグリコーゲンや脂肪が活躍する。
 グリコーゲンはすぐにブドウ糖に戻る性質があり、ブドウ糖となって酸素と結合してATPをつくる。脂肪の場合はちょっと違って、「β(ベータ)酸化」という作用によって直接にエネルギーとして燃やすことができる。
 こうして、糖質を制限することによって脂肪が燃えてやせていくのだ。
 だから、徹底して糖質制限を続ければ際限なくやせてしまう
 前にも述べたが、私たちは、遭難事故などにあいなにも食べられなくても、何日も生き延びることができる。それは、体に貯蔵しているエネルギーがあるからだ。
 『デブリン生化学』という教科書に、人間の体にどのくらいのエネルギーが貯蔵されているかについて書かれている。
 たとえば、体重七〇キロのアメリカ人男性の場合、約一六万キロカロリー分のエネルギーを持っていることになる。
 一日一五〇〇キロカロリー使うとして、全部使うのに一〇七日。だから、一か月くらいは悠々と生き延びることが可能なのだ。

<『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)より抜粋>