「僕は『昨対比』って言葉が大嫌いなんですよ(笑)。どういうわけか、多くの企業は『毎年成長して、規模を大きくする』みたいな方向に進みがちでしょ? でも、この業界は努力したからといって伸びるとは限らない。だから、ただ数字を提示されて『昨年の売り上げを上回りましょう』なんて言われても、実現できる根拠がない。むしろ、社員たちの目的と手段が入れ替わり、数字を意識した企画ばかりが増えて、商品そのものの魅力が失われてしまうと思うんです」(古屋氏)

寺山修司や江戸川乱歩からも少なからず影響を受けたという古屋氏。写真はキタンクラブが手がける「江戸川乱歩 少年探偵シリーズ マグネット 」©︎Ryutaro Hirai/Shigeru Yanase/POPLAR

 数字に囚われるあまり、企画や商品のクオリティが下がれば本末転倒だ。このため、ときに古屋氏は意図的に売り上げを減らすよう指示することもある。リリースする商品数を減らすことによって、商品ひとつひとつの品質を上げる。その結果、利益率を上げれば会社としては問題がないという考えだ。事実、キタンクラブの昨年度の年収は18億円から17億円へと減少しているが、利益自体は変わっていないという。徹底した企画力勝負が同社の方針だ。

古屋氏自ら「おもしろい!」と企画した「沈黙のカンガルー」。「あまり売れなくてスべりました。スベッた気はないですけど(笑)」(古屋氏)

 「自分が『やりたい!』と言った企画をそのままやることになるので、うちは『やらされている仕事』はほとんどないんじゃないかな? 9割近くが社員それぞれの自己発信というか、自己表現している会社ですね」(古屋氏)

 とは言え、企画が独りよがりになってはいけない。あくまでも購入するのは第三者──客──であり、外に目を向ける必要がある。そのため、日頃から社員には『外で見聞を広めろ』と伝えている。