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歴史的な秋山真之の電文に
隠されたメッセージとは!?

日露戦争の真実 日本海海戦の戦略を読み解く 第9回

 前夜届いた今日の予報文は「天気晴朗ナルモ波高カルベシ」。秋山の7段構えの戦法では駆逐艦や水雷艇が奇襲攻撃を加えることになっている。だが、波が高いと排水量の少ない駆逐艦や水雷艇では揺れが大きく魚雷の命中率は期待できない。連繋機雷も海面を漂って味方の艦艇を沈めてしまうかもしれない。

 秋山は暗に雷撃による奇襲は難しいかもしれないことを大本営に伝えようと一文を加えた。今日では一般的にこのように解釈されている。

 このとき「三笠」は鎮海湾の松真浦に停泊していた。近くに海底ケーブルを使える仮設電信局があるからである。

 名文として知られる歴史的な電文は、午前5時15分に打電された。「三笠」は大本営に打電すると、マストに「赤白赤」の三角旗を掲げた。旗旒信号は艦隊から戦隊、各艦艇へと伝わってゆく。港外に待機していた艦隊は準備を整え、「三笠」を待ち受けていた。

 午前6時34分、「三笠」は鎮海湾を出撃した。「三笠」は鎮海湾の加徳水道を進み、艦艇の真ん中を突っ切った。前部最上艦橋には、東郷司令長官、加藤友三郎参謀長、秋山参謀ら幕僚が勢ぞろいしている。

「万歳!」

 各艦艇の甲板を埋めた将兵から鬨の声があがる。各艦では士気を鼓舞する軍歌が歌われた。「三笠」のあとを第1戦隊、第2艦隊第2戦隊、第4戦隊が続いた。外洋に出ると、予想以上に波が荒かった。水雷艇は木の葉のように揺れる。

 

 

 

松田 十刻

まつだ じゅっこく

1955年、岩手県生まれ。立教大学文学部卒業。盛岡タイムス、岩手日日新聞記者、「地方公論」編集人を経て執筆活動に入る。著書に「紫電改よ、永遠なれ」(新人物文庫)、「山口多聞」(光人社)、「撃墜王坂井三郎」(PHP文庫)など。


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