トランプ米国を迎え撃つ<br />習近平の外交感覚とは?《前編》<br />中国のグローバル化は止まらない… |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

トランプ米国を迎え撃つ
習近平の外交感覚とは?《前編》
中国のグローバル化は止まらない…

中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」

 だが習近平の外交は、強い軍の存在と、それをきっちり掌握する強い党であることが共産党体制維持の最重要課題であるから、周辺の大国にはきわめて強い態度で出ることが大切であった。なので、習近平政権当初から、その外交政策は国際社会が目をむくような横暴さであり、粗野であった。その中でもとくに、日本は敵視されている。これは、後に香港筋から漏れ出る習近平の老幹部宛の手紙からもはっきりしている。

 この手紙はやはり香港ゴシップ本『習近平内部講話』(広度書局)に収録されてあり、その後、周辺筋から情報の信頼性を聞いたうえで、私としては本当に習近平の主張が書かれた文書として見ている。

 習近平がまだ総書記の座に就く前の二〇一二年九月一三日付の「第一八回党大会前の時局においての個人的見解」と題した手紙で、胡錦濤、温家宝および江沢民、李鵬(りほう)、朱鎔基、喬石(きょうせき)ら同志・長老宛てとしてある。手紙の日付は、習近平の動静が不明であった二〇一二年九月一日~一四日の間にあたる。このとき、習近平はヒラリー・クリントンら要人との面会をドタキャンして、さまざまな憶測を呼んでいた。多くのメディアでは水泳中、プールサイドでめまいを起こし、転んで背中をけがしたと報じ、一部のメディアは暗殺説を報じた。

 だが、実際はこのとき、習近平はけがを理由に二週間の休暇をとり、ブレーンの一人の王滬寧と二人で、この手紙を書いていた、らしい。

 手紙の内容は習近平が総書記の座に就いた暁に執りたい政策の方向性について書いてあり、とくに対日観について書かれた部分が刺激的であった。

※《後編》「今後の対日姿勢は強硬になる!?」(※明日11月23日配信)に続く…

新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』重版出来記念。本文記事一部公開。

 

著者略歴

福島香織(ふくしま・かおり)

1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。最新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ)が発売即重版、好評発売中。

KEYWORDS:

オススメ記事

RELATED BOOKS -関連書籍-

赤い帝国・中国が滅びる日
赤い帝国・中国が滅びる日
  • 福島香織
  • 2016.10.26