四つ目は、トランプの当選は、いわゆる米国的民主主義の敗北であり、米国式グローバリズムの衰退であるとみており、民主主義など欧米的な普遍的価値観を否定し、中華グローバリズム拡大の野望を抱く中国にとっては愉快であるということ。

シンガポール国立大学の東アジア研究所長の鄭永年が今年3月にシンガポール聯合早報に「トランプ主義と米国民主主義の苦境」という題でトランプ現象についての論評を寄稿している。

 「トランプは米国エリート階層が打ち立てたルールを無視して、過激な言論によって米国の政壇上のポリティカルコレクトネスの教条を端に追いやった」「米国はずっと自分を民主主義の典型モデルだと考え、民衆は国家の“イデオロギー”の制約を受けて、自分たちの国家が最高であると信じてきた。少数の冷静な学者を除けば、ほとんどの人たちが民主主義の疲弊について反省することはなく、民主的な政治的運動を行わない政治家など存在しなかった。民主主義を世界に拡大し、民主化すればそれでよし、と考えた」その結果「グローバル化が米国民主主義の内部均衡、政治と社会のバランスを崩してしまった」として、今の米国民主主義の混乱を説明している。

さらに言えば、在米政治学者のフランシス・フクヤマがフィナンシャルタイムズに「トランプ勝利は世界秩序の分水嶺となる」という寄稿をしている。「トランプの選挙中の意外なほどのヒラリー攻撃は、米国政治の分水嶺というだけでなく、世界秩序全体に対する分水嶺となる。われわれはまさに新たなポピュリズムとナショナリズムの時代に突入したようだ。この時代において、前世紀の50年代から構築されてきた自由主義的な秩序が憤怒の大衆に攻撃を受ける。世界はナショナリズム競争のリスクに陥る可能性も同様に大きい。それが事実ならば、1989年のベルリンの壁が崩れたときと同様の重大な時代の転換のシグナルとなるだろう」

新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』重版出来記念。福島香織、緊急寄稿!

 

著者略歴

福島香織(ふくしま・かおり)

1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。最新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ)が発売即重版、好評発売中。