まず一つ目は、トランプがTPPに反対であるという点。ヒラリーもTPP反対を選挙運動中に打ち出していたが、ヒラリーのTPP反対は選挙に勝つための妥協であり、その本音はTPP賛成派であると中国はみている。だがトランプは、オバマの政治的遺産であるTPPには絶対反対すると思われている。TPPは、中国にしてみれば経済的中国包囲網の形成を目指しているのだから、それがご破算になることは歓迎すべきことだ。

 

二つ目に、トランプ政権は日米同盟やNATOとの関係をオバマ政権ほど重視せず、結果的にアジアリバランス政策が後退する可能性が強いとみている。復旦大学米国研究センターの呉心伯教授はドイツ華語メディア・ドイチェベレに次のように語っている。「トランプ政権下は、為替の問題や貿易赤字問題については、中国に一層の圧力を加え、貿易摩擦あるいは貿易戦争を引き起こす可能性はある。だが、地政学政治と戦略方面においては、トランプ政権のほうがおそらく調整しやすい。オバマ政権のように、アジアリバランス政策によって西太平洋の地縁政治競争を引き起こすようなことはないだろう。この一点についても、トランプ政権の登場は中国に利する」

中国軍事科学院中米防務センター前主任の姚雲竹も環球時報に対し「もし、トランプが(選挙運動中に発言したように)同盟関係をこれまでの政権のように重視しないのだとしたら、アジアの安全保障の枠組みに大きな変化が起きる。この過程で権力と実力の真空が形成され、各国がこの状況をもとに調整に出てくるだろう」とみている。

中国人民大学国際関係学院副院長の金燦栄もよく似た意見を言っている。「現行のアジアリバランス政策はオバマ政権の政治的遺産だ。トランプはオバマに反感を持っており、そのまま継承することはないだろう。共和党はもともとその党綱を見ても、欧州とアジアの利益に関してはバランス重視で、民主党のほうがアジア太平洋に入れ込んできた。共和党は軍需産業利益重視だが、アジア、欧州、中東、バルカン対応を、もっとバランスよくやるのではないか。少なくともオバマ政権のように軍事力の六割をアジア太平洋に傾倒するようなことはないのではないか」(環球時報)。

中国の国際政治の専門家たちの予想が当たれば、アジアの米軍のプレゼンスが縮小し、中国が軍事的プレゼンスを強化できるまたとないチャンスとなる。

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