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衝撃!! 感染防御の手段としてマスクを着けるのは無意味【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑰】

命を守る講義⑰「新型コロナウイルスの真実」


 感染症から命を守るための原理原則は、変わらない。この原則を体に染み込ませる決定版。感染症専門医の第一人者・岩田健太郎神戸大学病院感染症教授の最新刊『新型コロナウイルスの真実』をもとに現在の感染者が急増する緊急事態に対し、私たちが「今、できる対策」を連続講義いただいた。「新型コロナウイルス感染症」から自分と家族、人々の命を守るために、今、私たちは何をすべきか。第17回目は、感染経路を理解する上でのマスクをつける意味を学びます。


■マスクはいつ役立つのか

マスク 新型コロナウイルス
マスクは感染防御のために使う意味はない。この事実と向き合うことが「感染経路」を理解することだ

 さて、人間が咳をするときに大事になってくるのが、マスクですね。咳をするときに口と鼻の前に布が一枚あると、咳がブロックされて飛沫がその先に飛んでいかない。普通に売られているマスクをサージカルマスクといいますが、要するにサージカルマスクは飛沫が飛ぶのを防止する道具なんです。

 逆に、ここを誤解している人も多いんですが、感染を起こしていない人がマスクをするのは無意味です。なぜかというと、飛沫というものは飛び散った後、周りの空間にウワウワと漂っているんですね。だからマスクを着けても、じつは鼻の横やほっぺたの横、顎の下などが隙間だらけなので、飛んでいる飛沫なんてすぐに入ってきてしまうんです。なので、症状のない人が飛沫に対してマスクを着けるのは、全くの無意味です。

 マスクには、ウイルスから防御する能力はありません。マスクを作っている会社は「ここの層でウイルスをストップできますよ」みたいに性能を謳っていますが、問題は布の性質ではなくて、隙間があるかないかなんです。

 それじゃあ医療用で使ってるN95マスクはどうかというと、じつはあれは密閉性が高くて、隙間がないんですね。ですので、あれをきちっと着けていれば飛沫が飛んできても大丈夫。だから、例えば麻疹の患者さんを診るときにもN95マスクは使われています。

 ではなぜ一般向けのマスクをみんなN95マスクにしないんだというと、じつはN95マスクはガスマスクみたいなもので、密閉性が高すぎるんです。息ができなくて、とても長時間は着けていられない。ぼくがエボラの対策でアフリカに行ったときにもこれを装着して入ったんですけど、1時間も経つと結構苦しくて、それ以上はなかなか続けられませんでした。巷にはネットでN 95 マスクを買っている人がいますけど、大体着け方が間違っています。息苦しいから隙間をつくるわけですね。でも説明したとおり、隙間があったら意味がないんですよ。もう全く、マスクの無駄です。

 というわけで結局のところ、N95マスクにしても普通のサージカルマスクにしても、防御のために使う意味はありません

 先般のようにマスクが足りないといわれている状況では、病院のようにマスクが必要とされる場所のことを考えると、むしろ逆効果。資源の無駄遣いです。「防御のためにマスクを使うべきではない」とさえ言っていいでしょう。

 もちろん、例えば花粉症とかでくしゃみが出る人もいるでしょうし、そういう人までマスクをするのがいけないとは思いませんけど、繰り返しますが、少なくとも防御の手段としてマスクを着けるのは無意味だということはちゃんと理解してください。

 逆に、マスクを着けていない人が街の中にいても、「おまえ、マスク着けてないのおかしいじゃないか」というのも間違いです。症状がないならマスクをする必要はないからです。普段、街を歩くときにマスクを着けないのは全然正しい。

 私も街でマスクは着けていません。先日、路上で声をかけられて「岩田先生、本当にマスクをしないんですね」と驚かれました。これ以上、あちこちで声をかけられたらマスクをしようかしら(笑)。感染防御に資することのないマスクの使い方をしない。不要な場合は着けない。たとえ、みんなが着用していても。これが、感染経路を理解するということです。
(「新型コロナウイルスの真実⑱ 最終回」へつづく)

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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