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ピカッとバットが光った。「さすが“天才”だ」……山本昌現役32年でもっとも忘れられない勝負

名選手と数々の対決をしてきた山本昌。投げた瞬間にベストピッチだと思ったボールを……

■バットがピカッと光った

 これは、信じられない話でしょうけど、前田選手がバットを振るとピカッと光ったように感じたのです。

「え?」

 そう思った時には、打球はすでにライトスタンド最上段に突き刺さっていました。私は、悔しさやショックよりも「完敗だ」と脱帽しました。「あのボールを打たれたらお手上げだ。さすが、天才・前田智徳選手だ」と。

 私は結局、この回の途中でマウンドを降りてしまい、敗戦投手となりました。結果については悔しさが残りますが、個人の対決としては純粋に打った前田選手を称えるような気持ちであったことを記憶しています。

 よく「ライバルは誰ですか?」と聞かれました。皆さんは気になるでしょうけど、私としては自分のことで精いっぱいだったので、特定の誰かを意識することはありませんでした。それでも、やっぱりヤクルトの古田敦也選手や巨人の松井秀喜選手、現在監督の高橋由伸選手、広島や阪神で対戦した金本知憲選手など、素晴らしいバッターを相手に投げられたことは、引退した今振り返ると「ものすごくいい勝負をさせていただいたな」と感謝しています。

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山本 昌

やまもと まさ

1965年8月11日、東京都生まれ。神奈川・日大藤沢高から83年秋のドラフト5位で中日ドラゴンズに入団。プロ5年目、88年の米国への野球留学をきっかけに飛躍し、同年8月プロ初勝利。以後はスクリューボールを武器に活躍する。93年に最多勝利、最優秀防御率のタイトルを獲得すると、翌94年には連続最多勝利と沢村賞に輝く。97年にも最多勝利。2006年9月16日対阪神戦でプロ野球史上最年長の41歳1カ月でノーヒットノーラン、08年8月4日の巨人戦で史上24人目となる通算200勝を樹立。通算581試合に登板し219勝165敗。


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