TPPに反対する理由。<br />すべての争いは、<br />「食」から始まる。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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TPPに反対する理由。
すべての争いは、
「食」から始まる。

食料は市場経済にはもっとも馴染まない!

 

 

◆食料は、文明が造り出した
 便利な品々とは異なる

 今日も食べ物がない。明日も食品の確保が難しい、という人々が大勢集まれば、食べ物の略奪が常習化し不安定な社会になります。
 それが地域全体の問題になれば、紛争への導火線となり、国全体に及べば、他国への侵略戦争へと発展していくのが世の常です。
 例えば、アフリカの多くの地域や国で勃発している紛争の主な原因を政治上・人種上・宗教上の迫害を問題視していますが、根本的な原因は、その地域や国が必要としている食料の生産量が不足していることであると筆者は考えています。
 一日に三度の食事が普通に食べられていれば、集団で戦う必然性がないからです。

 紛争や戦争への最悪のシナリオになる原因は「食の国際化」という名を借りて、人間が生きていく上で最も大切な「食」を資本の論理に組み込むことにより、他地域や外国に委ねてしまう「依存」にあるのです。
 
 今日的世相として、お金だけが頼り、自分だけが良ければいい、今日が無事に過ごすことができたのだから明日も大丈夫だろう。といった刹那的思考と、金銭優先の自己中心主義が世の風潮となっています。

その顕著な例が産地偽装です。産地偽装問題が顕著になっている主な要因は、今までは国内で普通に生産されていた農産物・畜産物・水産物などの食料が激減している証しです。考え方によっては、まだ産地偽装をする外国産の食料が国内にあるから「食」の確保という観点に立てば、由とするかどうかです。

 しかし、わが国が頼りにしている〝安い輸入食料〟が、近年の異常気象により、世界的に食料の生産量を低下させていて、食料価格は高騰しています。

「食の国際化」は世界の人々への「食」の提供を一握りの企業、限られた国で独占的に支配しようとする、究極の政治的・経済的戦略です。
 TPPの目的は、「食」の国境の壁を取り払い、国や地域の持つ特性を剥奪し、強い国や企業だけが勝利する弱肉強食の社会をつくることです。
 TPPは、〝食=命〟の食料を主導にしているため、単なる経済戦争に止まらず、弱者同士が「食」を求めて、血で血を洗う勝ち目のない戦争に巻き込まれていくことは必至です。

 戦争とは、当事者が最も大切にしているものを失うということです。TPPは、この忌まわしい事態を避けて通ることはできないのです。

 あたかも、TPPに参加すれば、加盟国によって、「食料安全保障」を得たかのように誤解している人々がいますが、食料の確保を保障する協定ではないことを承知して下さい。

 貿易の自由化は現代社会の習性です。ただし、文明が造り出した便利な品々のなかに〝食=命〟の食料が組み込まれていることに問題を提起しているのです。〝日本に未来がない〟ことが分かっている「食の国際化」を看過することは、わが国にとって自滅行為になるからです。

 国の有り様として、〝小さな生活圏〟そして〝大きな経済圏〟を樹立することが、わが国の形だと考えています。そのためには、TPPに署名した現状に対応し、「食の地域化」が絶対条件です。

 そのためには、哲学であり、思想でもある、そして戦略であり、戦術でもある『地産地消』を実践しなければならない火急の時です』

 以上は、島﨑氏がTPPに反対する理由の一端でしかないが、せめてもう少し議論が必要である問題であることは理解していただけたのではないだろうか。

『地産地消の生き方』(島﨑治道・著/KKベストセラーズ)より

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  • 島﨑 治道
  • 2016.11.09