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Kが感動したインレイの美と職人の情熱「昔の技術を学び、現在に生かしたい」

第4回 インレイ 加藤穂高さん(三重県津市)

古い技術や技法、デザインから学ぶ

インレイが施されたギターを手にご満悦のKさん。

K 僕はステージではピアノを弾くだけですが、ギタリストのギターにインレイが施されていると、照明のライトがインレイに反射して、とても綺麗なんですよね。
加藤 光のない暗いところでも貝は綺麗な色を見せてくれるんですよ。

K インレイで使われる貝の色って、色味で言えばとてもシンプルですが、ひとつひとつが違う色だから、その結果、3Dのように立体的に見える。天然素材特有の魅力ですよね。加藤さんはなぜ、インレイ職人になられたんですか?

多くのアーティストのインレイを手掛ける加藤穂高さん。

加藤 もともと音楽好きなんですよ。雑誌でインレイ特集を見て、「僕が求めていた美しさはこれだ。こういうものを作ってみたい」と思ったんです。でも、当時はまだ日本ではまだまだインレイの情報はなく、作り方もわからない。そんなのときに雑誌にも登場したレン・ファーガソンさんというインレイの達人が来日したのをきかっけに、「教えてください」とお願いして、アメリカ・モンタナ州へ渡り修業したんです。
K すごい執念ですね。
加藤 幸運だったと思っています。
 

 

K これから、どういう作品を作りたいと思っているんですか?
加藤 最近考えているのは、昔の技術や技法、デザインに目を向けて学びたいです。Kさんは琵琶という楽器を知っていますか?
K 古い弦楽器ですよね。三味線のような。
加藤 そうです。そのなかに世界で唯一現存する五弦の琵琶、「螺鈿紫檀五絃琵琶」(らでんしたんごげんのびわ)というのが、奈良の正倉院にあるんですが、2010年に19年ぶりに公開されたのを見て、強い感動を受けたんです。ガラスケースに張り付くような感じで、目が離せなかった(笑)。
 

螺鈿紫檀五絃琵琶。

K (写真を見ながら)これ、すごい綺麗な装飾ですね。この素材はもしかして、貝ですか?
加藤 そうです。1300年前の作品なのに、貝の輝きがそのまま残っているんです。すごい素材だなぁと改めて感じました。そしてこの螺旋細工の技法も非常に高度な技術だと言われているんですよ。以前、古いインレイ作品のレプリカを作ったんです。正直、とても苦労しました。
K 昔の技術を再現するのは、大変なんですか?
加藤 非常に。だからこそ、古い技術を勉強していきたいと思ったんです。今後、古いものを修理するというときに、出来る限りの力で答えられるように、準備をしておきたいんです。
K 技術の継承が、作品の継承となり、いろんなものを未来へ残せるんですね。

 

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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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