Kの琴線に触れた京版画・摺師の決意「伝統は守るのではなく、継承することが大事」 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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Kの琴線に触れた京版画・摺師の決意「伝統は守るのではなく、継承することが大事」

第2回 京版画(京都府京都市)竹笹堂 5代目竹中健司さん

300年後、500年後のためにやっていること

時代の流れと共に、時代につなげるための最善策を模索し続ける竹中さん(右)。

K 竹中さんは「守るよりも、継承する」という気持ちがあるから、新しい挑戦というか、クリエイティブなことにチャレンジできるのかもしれませんね。
竹中 あるとき気がついたんですが、僕がこうやって大きくなれたのは、木版があったからなんだと。今の時代は僕がそれをやっているけれど、次の時代はまた別の担い手が続けてほしい。時代はみんなでまわしていくものだから。継承するためにいろんな手立てを考えています。

K たとえば、どんなことですか?
竹中 今までやってきたことをこれから先もやらなくちゃいけない。そういう意味で、植林活動をやっています。版木に使う桜の木もだんだん少なくなってきている。じゃあ、植林をしようと。木版画を作る道具は天然素材で作られたものが多いのですが、今では希少な素材もあり、代替え品や普及品の開発もします。でも、作っていけるものもあるわけです。だったら、無くなったからどうするじゃなくて、300年後、500年後のために、今から行動しているんです。

K 道具や素材も継承できるよう準備をしているんですね。素晴らしい。
竹中 たとえば、他の工芸仲間にとっても木は必要ですからね。植林することで山や川がキレイになる。海や空気だって変わってきますから。そうしたらご飯がおいしくなるやんって。そういう最高の循環が起きるんですよね。
K この工房から、多くの未来が生まれているんですね。

●Kの視線●
人のぬくもり、人間味が本当のリアルを生み出す

多くの職人が分業し、一つの作品をつくり上げる様は、音楽に通じるものがあると語るKさん。アナログ作業だからこその微妙な差異が、作品の温かみを生むという。

 絵師、彫師、そして摺師。それぞれの技術とイマジネーション、創造力が交わって、ひとつの作品が生まれる。木版画作りが分業制だと知り、なんだか、バンドに似ているなと思いました。同じ楽曲であっても奏でる人間が代われば、できあがりも違う。そして、たとえ同じ人間が集まって演奏しても、その日によって楽曲の彩りは違うものになる。木版画にもそういうライブ感があるんですよね。

 デジタル化が進み、写真や動画、印刷物でも“よりリアルなもの”を追求している。そういう作品はキレイだし、同じものをたくさん作ることも簡単にできます。でも、作っている人のぬくもり、人間味があふれ出る作品のほうがよりリアルなんではないかと感じました。

 伝統は守ることじゃなくて、継承、バトンタッチしていくものだという竹中さんの素晴らしい言葉に、胸がジンとしました。

 

竹笹堂の外観。

竹笹堂
(たけざさどう)

■所在地 〒600-8471 京都府京都市下京区綾小路通西洞院東入ル新釜座町737
■TEL 075‐343‐8585
■営業時間/11:00〜18:00(季節によって変動あり)
■定休日/ 日・祝日(臨時営業あり)
「 竹笹堂」サイトhttp://www.takezasa.co.jp

PROFILE

 

K(ケイ)
1983年韓国ソウル生まれ。2005年デビューし、「Only Human」が大ヒット。以降もピアノ弾き語りのスタイルで、シンガーソングライターとして、J-POP界で活躍している。2014年タレントの関根麻里と結婚。昨年、第一子が生まれた。
Kオフィシャルサイト http://www.club-k.cc/

●番組情報●
「伝統の継承~笑顔に逢いに」 
三重テレビ 毎土20:25~20:55
KBS京都 毎土10:30~11:00
びわ湖放送 毎土10:30~11:00
奈良テレビ 毎日 18:30~19:00 
10月1日、2日放送予定「京友禅~手描友禅の段~」

 区版画

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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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