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田原総一朗 「リベラルな報道の劣化が甚だしい」

田原総一朗さん30日毎日連載 Q10.若日本でも政権交代があった方がいいのでしょうか

『変貌する自民党の正体』(ベスト新書)を上梓。常に第一線のジャーナリストとして活躍したきた田原総一朗氏に話を聞いた。

 Q10.日本でも政権交代があった方がいいのでしょうか?

 

 経済の面から見ても、政権交代があった方が決まっています。これは本(『変豹する自民党の正体』ベスト新書)の中でも主張したことだけど、今のままの民進党では難しい。アベノミクスや安保関連法案に関して、ただ「反対!」というだけでなく、問題点を明確に指摘したうえで、対抗できるだけの政策を打ち出さなくてはいけないでしょう。それができないものだから、7月の参院選は、あのような結果になった。
 もう一つの問題は、言論封殺の風潮が強くなっていることだ。これにしても、リベラルを掲げる民進党が、今後の国会でどう対抗していくかを注目する必要がある。
 本来、リベラルは民主主義と基本的人権の尊重、言論表現の自由を大切にして、平和憲法を尊重するもの。それなのに憲法改正や集団的自衛権の行使などに反対するための、根本的に理論武装をした主張が弱い。
 これは新聞やテレビをはじめとしたマスコミも同じで、リベラルな報道の劣化が甚だしい。2月の衆議院予算委員会で高市早苗総務省が、「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返した場合は、放送法4条に基づき、電波停止を命ずる」という発言をした。でも、放送法というのは、第1条で放送の自立、表現の自由」を掲げているんだ。4条は倫理規定であって、権力が介入するのは許されない。そこ発言に対しては、全放送局が抗議すべきであるのに、反応が全く薄かった。旧民主党の反発も、それほど強いものとは思えなかった。
 だから僕は、都知事選にも出馬した鳥越俊太郎やTBS報道特集のキャスター、金平茂紀らと共同で、「高市総務相の電波停止発言は、憲法と放送法の精神に反している」「私たちは怒っている」という声明を発表したんだ。
 その後はみんなも知っている通り、リベラルな報道番組の代表だった番組のキャスターの交代が相次いでしまった。どう考えても、放送局側が政府の意を汲んだとした思えない。それくらい、日本のマスコミのリベラルは危機に直面していると言える。
 前に話した言論の自由と似てきてしまったけど、政権交代によって言論封殺の風潮を打ち破り、政府が民意とかけ離れた政策をしようとした時に止める役割ができるようになるためにも、政権交代は行われた方がいい。

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明日の第十一回の質問は「最近、田中角栄氏が再評価されています。その要因は?」です。

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田原 総一朗

たはら そういちろう

ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。60年早稲田大学文学部卒業。同年岩波映画製作所入所。64年東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』講談社)、『安倍政権への遺言 首相、これだけはいいたい 』(朝日新聞出版)など多数の著書がある。


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